パチンコホールの「受動喫煙」対策
転職雑記 2019/2/5
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控える中、2018年7月に受動喫煙対策を強化した「改正健康増進法」が成立した。これにより、2020年4月から多くの施設が禁煙化される。
2019年夏以降は学校、保育所、病院・行政機関は原則禁止(屋外の喫煙場所はOK)。そして、2020年4月以降は事務所・飲食店が原則禁止となる(屋外の喫煙専用室はOK)。
ただし、個人や中小企業が経営する既存の飲食店で客席面積が100平方メートル以下の店は「喫煙可能」などの標識を掲げれば、店内でたばこを吸うことができる。
もちろんパチンコ店も例外ではない。早急な受動喫煙対策が求められている。
日本における喫煙率は17.7%(2017年 厚生労働省国民健康栄養調査)と、1966年のピーク時83.7%と比較する激減している。しかし、パチンコ・パチスロ遊技客に関して言えば、喫煙率はいまだ50%を超えるとも言われており、その対応には苦慮しそうだ。
現在、全国のパチンコ店では喫煙所など分煙対策を施している店舗もあるが、全面禁煙の店舗となると約300軒ほどで全体の約3%に過ぎず、受動喫煙対策はまだ始まったばかりの状況と言えるだろう。
また、人気の「加熱式タバコ」については、従来の紙巻タバコとは別扱いとなっていて、禁煙エリアと加熱式タバコエリアに分けて営業することが可能となっている。なお、「電子タバコ」については日本ではニコチンを含まないものとなっており、ここでは含まれない。
パチンコホールの対策として基本となるのは「喫煙所」の設置だろう。しかし、懸案となりそうなのが喫煙所の仕様である。
例えば設置場所を考えると、郊外店など敷地の広い大型店舗は余裕がありそうだが、駅前など敷地に余裕がないホールは厳しいと言わざるを得ない。また、その収容人数想定も頭を捻るところだ。スペース問題と絡んで、厳しい店舗が多いことは用意に想定できる。
さらに、技術的な問題もある。法律が定める技術的な規格基準を達成した喫煙所でなければならないからだ。現状、厚生労働省から正式に発表されていないが、2018年の12月11日、厚生労働省から「煙の流出防止にかかる技術的基準(案)」が発表された。その内容だが一部ハードルが非常に高そうなのだ。
まず、その内容を見てみよう。
「喫煙専用室等におけるたばこの煙の流出防止にかかる技術的基準(案)」
喫煙専用室等で必要となる「煙の流出防止措置」は、以下のとおり。
① 入口における室外から室内への風速が0.2m/秒以上であること
※ 入口にのれん、カーテン等を設置し、開口面の面積を狭くするという工夫により、風速0.2m/秒以上を実現することもできる。
② 壁、天井等によって区画されていること
③ たばこの煙が屋外に排気されていること
※1 施設内が複数階に分かれている場合においては、フロア分煙を行うことが可能
※2 法律の経過措置対象である小規模飲食店において、店舗内の全部の場所を喫煙することができる
この中で①②は対策工事は問題無さそうだが、厳しいのは③である。煙を建物外に排出しなければならないのだ。
既存の排気用ダクトに繋げられるのあれば問題ないが、賃貸物件などの建物は工事が難しい可能性がある。壁や地下を通すにしてもダクトスペースや排気口の場所など、技術や条件的に困難が予想される。
全面禁煙の店舗以外、喫煙、禁煙のエリアを分ける壁やプラスチック版、排気ダクトなど、相当な店内工事が必要で、その費用や営業の一部ないし全面停止期間を考えると、エリア分け店舗は、体力の少ない中小規模のパチンコホール企業にとっては工事の負担が重くのしかかりそうだ。
なお、飲食店(都内)の禁煙化に対する最新の意識調査では、全面禁煙化に賛成なのは5割で、実施店では売上増になって店舗もあるなど、好意的な捉え方をしている店舗が多いという結果が出ている。もちろんお酒を提供する店などでは反対意見も強い。
パチンコホールとの客層の違いなど単純には比べられないが、業態やエリア、店舗規模によってはまだまだ禁煙化のハードルが高いことは間違いない。