ユビキタスからIoTへ「パチンコ店」での展開は?
パチンコ店の仕事・スキル 2021/2/4
「ユビキタス(英: ubiquitous)」とは、遍在(いつでもどこでも存在すること)を意味するラテン語に由来する言葉です。そこから利用者が「意識することなくコンピューターやネットワークなどを利用できる状態」を指す言葉に使われようになりました。
言葉自体は2000年頃から登場し、「いつでも、どこでも」ネットワークにつながる「ユビキタス社会」としてイメージされるようになりました。
そして近年、このユビキタス社会の現実化が急速に進んでいます。
1.ユビキタス社会の発展
爆発的に普及したスマートフォンをはじめタブレット、パソコン、さらにはウェアラブルデバイス(スマートウォッチに代表される装着可能なコンピュータ。
腕時計型、眼鏡型などの端末)といった情報端末を通じ、様々な「モノ」が無線LANやBluetoothなどの無線通信とセンサーを介してインターネットの一部を構成し、「IoT」(IoT: Internet of Things)=「モノのインターネット」というキーワードで表現されるようになりました。
IoTのコンセプトは、自動車や家電、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることでサービスが発展し、新たな付加価値を生み出すというもの。
これにより、製品の販売に留まらず、製品を使ってサービスを提供するいわゆる「モノのサービス化」の展開も広がっています。
例えば、帰宅中にスマートフォンアプリで部屋の電気をつけたりお風呂を沸かしたり、あるいは冷蔵庫では中身を確認ができたりします。
また家電製品では湯沸かしポットの使用状況をスマホで受けて家族の安否を確認するCMもありました。
ウェアラブルデバイスでは脈拍や血圧を測定し、歩行距離や運動量から消費カロリーを計算するなど健康管理もできます。
このほか自動車へ情報端末を組み込むことで、自動運転を実現しようとする試みも行われています。
さらに企業は、そうしたモノの利用状況をデータ化し(顧客の属性や購買履歴、利用時間・場所・行動など)、ビッグデータやオープンデータを利用してさらなるサービスを図る例も多く見られます。
このようにユビキタス社会の発展によりIoTサービスは大きく広がってきているのです。
2.デジタル・マーケティングの例
モノがインターネットに繋がることによって、それまで取得することの出来なかったあらゆるデータを集めることが可能になりました。
そして集まった顧客情報(属性・趣味・思考や行動パターンなど)などを利用し、デジタルマーケティングに活用されています。
パチンコ業界でも自店の顧客情報を分析して、以下のタイプに沿ったサービスを展開することは可能ではないでしょうか。
・コンシェルジュ型
「コンシェルジュ」とは、元はアパート(アパルトマン)の「管理人」というフランス語ですが、そこから発展して現在ではホテルの総合案内係として有名ですね。
同様にIoTのコンシェルジュ型サービスは、ネットワークを通して情報収集していたサービスを、ユーザーに働きかけるサービスに変換するものとなります。
例えば,NTTドコモが提供する「iコンシェル」では、オートGPS機能により取得する利用者の位置情報と、コンテンツプロバイダが保有している情報をマッチングすることによって交通情報や周辺のおすすめレストランの情報、観光情報などを今いる場所・時間に合わせた配信しています。
パチンコホールでも、会員の属性や利用状況に合わせてカスタマイズした店舗情報を提供することが可能ではないでしょうか。
・リアルタイム型
リアルタイムなサービスも可能です。
例えばJRの「まもレール」は、駅の自動改札機通過時にあらかじめ収集・設定した携帯電話のメールアドレスへ通過情報を送信するサービスで、特に子供の見守りサービスとして人気になっています。
また、スペインのバルセロナ市では公共サービスの提供に活用しており、駐車場に小型センサーを設置して、駐車場の空き情報を利用者に提供しています。
このサービスにより、観光客は駐車場を探す時間を削減することが可能になり、駐車場は収入が増え渋滞も緩和されました。観光客の滞在時間も長くなり、観光収入も増収になっているそうです。
パチンコホールでの展開としては、リアルタイムな出玉情報を配信するサービスがあげられそうですね。
・コラボレーション型
これはIoTサービスとパートナー企業を繋いで新商品やサービスを展開するタイプです。
有名なのはKDDIが進めているコラボレーション型ホームIoTサービス「with HOME」です。他社が「au HOME」のプラットフォームを使ってホームIoTサービスを提供するもので、Win―Winとなるタイプのサービスです。
また、コクヨが販売するIoT文具「しゅくだいやる気ペン」は子供の学習意欲を高めるWeb連動商品ですが、昨年スマートフォンアプリをバージョンアップし、新コンテンツとして海洋研究開発機構とのコラボで、海と地球の探求をテーマにした「うみのふしぎの庭」を無料配信しています。
このタイプも、例えばホールと地元企業などがタイアップした商品をネットやアプリで告知、販売するなど実現性が高いのではないでしょうか。
3.プライバシー問題
「いつでも、どこでも」ネットワークに接続し情報やサービスを受けることができるということは、「いつでも・どこでも」様々な情報を収集されているということであり、そこにはプライバシーに関する個人情報も収集されています。
これまでのOne to Oneマーケティングで利用されてきたサービス利用者の個人情報が、ユビキタス社会では所在地、購買履歴、商品の利用状況まで収集・分析され、かつリアルタイムでマーケティングに利用される可能があります。
しかし、自分向けであっても常に個人情報を晒される状態になることについて当然アレルギーもあり(自分以外が見る状況も有り得る)、個人情報の保護という観点から問題があるのは間違いありません。
2005年に個人情報保護法が施行され、いまだ迷惑メールの問題も解決されないなど、消費者の個人情報についてパーミッション(許諾)を得ることは難しくなっています。
しかし、提供される情報を「利用したい」というニーズも高いので、今後マーケティングのための個人情報の収集・利用には、これまで以上にプライバシーに配慮した対応が求められることに留意する必要がありそうです。