パチンコ店で有効活用できるNPS顧客分析
パチンコ店の仕事・スキル 2021/6/1
「NPS=ネット・プロモーター・スコア(Net Promoter Score)」は「顧客推奨度」と訳され、これまで定量的な調査が難しかった顧客ロイヤルティを数値化するための指標です。
「自分の近しい人に商品をすすめるかどうか」をアンケートすることで知られています。
この指標は2003年にアメリカの大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏より発表され、Apple、Amazon.com、Google、Facebookなど顧客志向を重視する企業で特に採用されています。
2011年の時点で米国の売上上位企業500社をランキングするフォーチュン500で、実に35%の企業が「NPSを採用している」統計もあります。
特徴は「顧客との接点があるシーン」において利用される指標という点で、パチンコ店の顧客調査にも利用しやすいものです。
点数が高いほど、顧客が商品・サービスに対し愛着・信頼があることを示しているため、リピーターを増やすなど顧客ロイヤルティを高めて業績向上に繋がるといわれています。
また競合他社との比較もしやすくマーケティングに活用できます。
1.NPS調査の種類
NPS調査は大きく分けて3種類あります。
①リレーション調査
リレーション調査は、企業やブランドに対して総合的にどのように評価しているかを調べる方法です。
年間を通して商品・サービスの購入や利用をしてくれる顧客に対し、満足度を評価してもらいます。
調査は半年か1年に1回実施し、質問数は20~25問ほどになるのが一般的です。この調査を行うことで、何を改善すべきか大まかなあたりを付ける事ができます。
また、他社ブランドとの比較を行い、自社の強みや弱みを把握する際にも活用できます。
②トランザクション調査
サービス内の重要な顧客接点ごとに評価する方法です。
商品の購入や使用・来店・ウェブサイトへのアクセスなど、重要な顧客体験の直後に行われます。
日次・週次・月次という短いサイクルで行うため5問~10問程度のシンプルな質問にすることがポイントです。
リレーションシップ調査と比べてより具体的に課題を発見することに適しています。
③従業員への調査
「あなたはこの職場を誰かに紹介したいですか」という質問をすることで、職場への信頼度・関心度を測定します。
高ければ高いほど離職率が低く、従業員の貢献意欲も高いといえます。
2.NPSの調査方法
評価は0~10点の11段階で表し、点数(推奨度)によって顧客を「3つのグループ」に分類します。
・0〜6 点を「批判者」
・7〜8 点を「中立者」
・9〜10 点を「推奨者」
「推奨者の割合(%)ー批判者の割合(%)」で NPS を算出します。
【例1】100 人の顧客のうち批判者が30人、中立者が60人、推奨者が10人の場合、計算式は「10%(推奨者の割合)ー 30%(批判者の割合)」となるため、NPS®は「-20」
【例2】10人中6人が9点以上なら、推奨者は60%、6点以下が2人いれば批判者は20%なので、NPSは+40。
平均的にはNPSが12ポイント増加すると、企業の成長率が倍増すると言われ、問題解決のための施策を行った際に、前後調査で数値を見る場合には非常に有効と言われています。
3.顧客満足度(CS=customer satisfaction)との違い
これまで、顧客の声を聞く指標として「顧客満足度(CS)」が多くの企業で利用されてきました。
大変似ているCSとNPSですが、どのような違いがあるのでしょうか。
大きな違いは、NPSが収益性と強い相関を示す点です。
NPS調査では「今後この商品・サービスを他者に紹介しますか」という質問を通して未来の行動を点数化するため、今後の収益性と連動すると考えられています。
一方CS調査は「商品・サービスに満足していますか」という現時点において問う質問のため、未来については数値化できません。
また、顧客満足度は回答者本人のみを対象としたものですが、NPSは家族や友人に紹介することをベースにしているため、回答者以外のユーザーも関係してきます。
実際の企業データでもNPSが高いサイトほど、一年以上継続利用している顧客の割合が高い事がわかっています。
4.NPSを導入するメリット、デメリット
【メリット】
・シンプル
誰が見ても分かり易い指標である。
・回答が得やすい
点数をつけるだけの簡単な質問のため、回答を得やすい。
・競合他社と比較できる
統一指標であるため、競合他社と比較することで、顧客から見て自社が業界内でどのような位置にいるか確認することができる。
・経営分析に利用できる
業績との連動性が高いため、経営分析にも効果的です。重要業績評価指標(KPI)として活用することもできる。
・人事評価にも利用できる
社内の人事評価の基準にNPSを設定することもできる。
・ネット利用も簡単
SNSを利用したキャンペーンの効果測定も可能。
【デメリット】
・他業種とは比較しにくい
業界によってNPSの平均が異なるため、特定の企業のNPSの絶対値にはあまり意味がありません。
そのためあくまでも業界平均や同業他社のNPSと比較することで、自社がどのような状況にあるのかを認識する必要がある。
・高度な調査能力が必要
本格的な導入のためには、自社の何に対するNPS調査を行うか具体的に想定し、その目的に合わせて質問設計を行う必要がある。
・母集団の設定
適切な母集団に対してNPS調査が行われない場合、業績とNPSの相関がみられないことがある。
・サンプル数の不足
中間的数値を使用しないため、サンプル数が不足することがある。
・数値バランス
中間値に標本値が集中しがちな場合、ほかの指数と比べて不利になる傾向がある。
・日本人は数値が低くなる
「日本人は回答が中間の5に集まりやすく、NPSは他の国に比べて低くなる傾向がある」という指摘も存在する。
5.日本はマイナスになりやすい
日本におけるNPS調査の特徴として「マイナスに振れやすい」ということが挙げられます。
この理由は日本人の文化的要因であるとされ、日本人がアンケートに回答する際の「中心化傾向」が原因と言われています。
例えば5点満点で評価を聞かれた場合、つい真ん中の3点を選択してしまう傾向です。
NPSは0~6点までを「批判者」と分類しており、スコアを引き下げる要因になります。
ただし、数値のマイナス傾向は顧客体験を改善していく上では問題ありません。
重要なのは定期的に調査を行い、施策の効果や同業他社と比較し自社や商品やサービス等がどのような評価を受けているのかを把握することですから、数値を気にせず顧客の本音と向き合うことが何よりも重要と言えるでしょう。
NPS調査は定常的に行うのが理想です。最低でも四半期に1度は調査を実施することが良いとされています。
定期的にNPSの推移を確認し、施策の効果や現在の顧客からの評価をリアルタイムに把握して業績アップに役立てましょう。