パチンコ業界が煽りを受けたIR(統合型リゾート)の現在

パチンコ市場規模・動向 2022/5/19

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統合型リゾート(IR)は、2016年に「カジノ法案」(「統合型リゾート(IR)整備推進法」)が成立し、日本でもカジノが解禁されるということで注目されてきました。

当初は「2020年の東京オリンピックに合わせてオープン」とも言われていましたが、コロナ禍の影響でオリンピックは2021年の開催となってしまい、また推進していた菅首相の政権も退陣するなど、IRに関する活動は政府・各自治体ともに一時停止せざるを得ない状況になっています。

今回は、パチンコ業界にも影響があると言われている日本版カジノの現状について、最新状況をお伝えします。

1.コロナ禍で遅延・離脱

IR事業は、コロナ禍以前には早くて2025年頃にもオープンするのでは?と予想されていましたが、現時点では政府の基本方針も策定されておらず、オープン時期は未定の状態です。

さらに、推進していた菅首相と二階幹事長の政権が退陣したのも痛手となっています。

引き継いだ岸田政権もIR推進派ではありますが、ウクライナ危機による経済的打撃も大きくなりつつある現在では、IRまで手が回っていないとうのが正直なところでしょう。

カジノ誘致の候補地となっている主な自治体は、東京、神奈川、愛知(名古屋、常滑)、大阪、和歌山、長崎で、特に有力候補地とされているのは大阪、長崎となっています。

首都圏からは横浜が誘致を表明していましたが、2021年の市長選でIR反対派候補が当選し、誘致撤回正式に表明したことで関東の有力候補地が消えるという状態になっています。

また、二階前幹事長のお膝元・和歌山でも、4月20日の和歌山県議会で県が誘致を進めてきたカジノを含む統合型リゾート(IR)について、区域整備計画の認定を国に申請する議案が反対多数で否決されるという事態になりました。

県は和歌山市の人工島「マリーナシティ」へのIR誘致を計画し、2027年秋ごろの開業を目指していましたが、申請案の否決に対し国が求める同28日までの整備計画提出を断念し、IR誘致計画は事実上中止となっています。

2.海外企業もオンラインカジノにシフト!?

大阪府では現在、アメリカのカジノ大手MGMリゾーツ・オリックスの共同グループと提携してIR事業が進められていますが、根強い反カジノの機運が高まれば、MGM撤退の恐れもありそうです。

同社は21年1月にオンラインカジノを共同運営している英企業・エンテインに対し110億ドル(約1兆2000億円)での買収を提案していました。

この交渉は成立しませんでしたが、コロナ禍でカジノ施設が閉鎖される中、オンラインカジノが注目されており、MGMによる買収騒動はそうした動きと連動しているとされています。

つまり、日本でのカジノ市場進出というリスキーな事業から撤退して、オンラインへ経営資源を集中するという判断も十分あり得るということです。

ちなみに、米カジノ運営のシーザーズ・エンタテインメントは2020年9月に、英ブックメーカーのウィリアム・ヒルを29億ポンドで買収することで合意しています。

また、日本から撤退した世界最大規模のIR事業者、ラスベガス・サンズも昨年3月、マカオやシンガポールなどアジア事業やデジタル分野へ経営資源を集中するとして、ラスベガスのIR「ベネチアンリゾートラスベガス」と「サンズ・エクスポ・コンベンションセンター」をファンドに売却しています。

「コロナ禍によるオンラインカジノの人気上昇が、結果的に日本市場から海外企業の撤退を加速させている」といえるでしょう。

3.有力候補地は5都市に

IR(カジノ)の開業が認められるのは全国で3か所と決められています。

以前はIR誘致を発表している自治体は北海道や千葉、神奈川などもありましたが、コロナ禍で次々に撤退を発表しており、現在残っているのは東京都(お台場)、愛知県(名古屋市、常滑市)、大阪府(夢洲)、長崎県(ハウステンボス)の5か所となっています。

・大阪府

大阪府では2025年国際博覧会(万博)の開催が決定していることから、カジノと万博の相乗効果で関西全体の経済活性化をしたいとしてカジノ誘致に積極的な姿勢をみせています。

しかし、現在はコロナ禍や国のスケジュール遅延により、2025年の全面開業は断念し、「2020年代後半に部分開業」と方針を変更しています。

・長崎県

長崎県は佐世保市にあるハウステンボスの一部をIR候補地とすることでハウステンボスとも既に合意しています。

また、IR事業者にオーストリア政府が運営するカジノ企業「カジノオーストリア・インターナショナル」が候補になっていますが、同社は世界35カ国、300カ所以上でカジノ施設やロト、宝くじ運営などを手掛けており、オランダでも事業をしている経験からハウステンボスとの親和性も高く最有力事業者になっています。

・東京都

東京都ではお台場が候補に挙がっていましたが、小池都知事が「新型コロナウイルス対策を優先する」として昨年7月に検討作業の休止を発表しています。

しかし、お台場に関しては東京オリンピックの施設も残っており、これらを活用する方向で誘致の動きが復活するかもしれません。

・愛知県

愛知県では名古屋市、常滑市の2都市がそれぞれ独自に進めていますが、名古屋市に関しては候補地域との協議が難航しており厳しい状況となっています。

また、本来であれば有力候補地としてここに和歌山県も加わるはずでしたが、前述の通り先月の議会で実質中止となったため候補地から外れてしまいました。

 

国は各自治体からの申請を受けて計画内容を審査し、2022年中にIR開業の候補地を正式決定する予定です。

とはいえ、収束が見えないコロナ禍やウクライナ危機の影響も大きく、予断を許さいない状況ですので、今後の国のスケジュールに注目したいところです。

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