早期退職と希望退職の違い
転職雑記 2024/10/22
近年、従業員が定年を迎える前に退職する「早期退職」「希望退職」についてのニュースを目にする機会が増えたように感じています。
特にコロナ禍以降では、早期・希望退職者の募集人数が毎年1万人を超えているようです。
労働者にとって「早期退職」や「希望退職」の募集は他人事ではない状況と言えます。
今回は早期退職と希望退職について、その違いやメリット、デメリットなどを確認したいと思います。
1.年間1万人ペース
東京商工リサーチによると、2024年4月23日現在、「早期・希望退職者」の募集が判明した国内の上場企業は21社で、この時点で前年同期の16社を5社上回っています。
対象人数は3,724人(前年同期1,236人)で、前年同期の3倍に達しました。
すでに2023年(3,161人)の年間実績を563人上回り、構造改革の促進で年間1万人超のペースで推移しています。
2.「早期退職」と「希望退職」の違い
早期退職と希望退職は、退職することは同じですが、その内容は大きく違います。
早期退職は定年前に従業員が組織を退職できる制度のことで、恒常的に従業員が応募できる「福利厚生」としての意味合いが強いものです。
一般的に応募者には「退職金の割増し」や「再就職支援」などの優遇措置が用意されています。
一方で、希望退職は、企業が将来の経営リスクに備え、時期を限定して早期退職者を募る制度です。
これに応じる従業員には早期退職制度と同じく「退職金の割増し」や「再就職支援」などの優遇措置が用意されていることが一般的ですが、多くの場合、早期退職とは違い従業員への「退職勧奨」が伴います。
3.早期退職のメリットとデメリット
早期退職をする人は常に一定数いますが、そのメリットとデメリットについて確認してみましょう。
【メリット】
①退職金が割増になることがある
早期退職の場合、退職後のキャリア形成を応援する意味も込めて、退職金を割増にしている企業は少なくありません。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、令和4年度の大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の平均定年退職金額が1,896万円に対し、早期優遇を利用した場合は2,266万円となっています。
②失業保険をすぐに受け取れる
失業保険は、会社都合の場合には給付制限期間がなく、失業保険が退職してすぐに受け取れます。
早期退職優遇制度を利用した場合も会社都合になるため、同様に給付制限期間を経ることなく受給することができます。
③再就職支援を受けられることがある
早期退職優遇制度を導入している企業では、福利厚生の一環として再就職支援のサポートを受けられる場合があります。
④セカンドキャリアのチャンスが広がる
定年後に再就職するより、早い段階で早期退職をする方がセカンドキャリアのスタートを切りやすくなります。
また、再就職以外にも開業や独立など選択肢が広がるでしょう。
【デメリット】
①収入が減る可能性がある
早期退職後、すぐ次の仕事が見つからない場合は収入が減ってしまいます。
また、次の会社で必ずしも前職よりも収入が高くなるとは限りません。
独立開業を目指した場合でも、軌道に乗るまで収入が減るだけではなく、経費などの出費がかさむ可能性があります。
②再就職が上手くいくとは限らない
次の転職先が決まっていない場合、40代、50代の再就職に時間がかかることが予想されます。
キャリアがあるからといってすぐに再就職先が見つかるとは断言できません。
③年金の支給額が減ることがある
年金が減額となるケースがあります。
一般的に会社に勤めていると厚生年金に加入し、フリーランスや個人事業主などは国民年金に加入しています。
厚生年金は加入している期間や給与額によって金額が変わるため、早期退職により加入していない時期が長くなったり、前職よりも給与が下がったりした場合、もらえる年金額が減る可能性が出てきます。
4.希望退職のメリットとデメリット
【メリット】
①退職金を多く受け取れる
これは早期退職と同様ですが、早期退職より退職金の割増し条件の事例が多いと言えるでしょう。
②失業保険の給付がすぐ受けられる
これも早期退職と同じ条件といえます。
希望退職は「会社都合」での退職となるため、待機期間7日の後すぐに受給可能です。
【デメリット】
①収入がなくなる
退職すると給与がなくなるので、生活費等の支出が負担になってきます。
②不本意な転職
転職活動が長引いてしまう場合もあります。
転職先が見つかっていない状態で退職する場合、生活費などの理由で納得しないまま就職することがないよう注意が必要です。
③年金の支給額が減る
これは早期退職も同じですが、国民年金への切り替えの時期が発生する場合、年金の支給額が減る点も気をつけましょう。
失業して国民年金だけの期間が長くなると、厚生年金からの支給がないので将来の年金受給額が減ることになります。
早期退職、希望退職にはそれぞれメリットやデメリットがあります。
いずれに応募するにせよ、上記を参考にしながら、今後のキャリアプランを踏まえ退職をするかどうかを慎重に検討するようにしましょう。