副業における「労働時間の通算ルール」とは?
転職雑記 2026/7/28

近年、本業を続けながらアルバイトをしたり、別の会社で働いたりするなど、副業・兼業という働き方が選択肢の一つとなっています。
そこで知っておきたいのが、複数の勤務先で雇用されて働く場合の「労働時間の通算ルール」です。
労働基準法では、一定の場合、勤務先が異なっていても労働時間を通算して取り扱うことが定められています。
副業を始める際には、自分自身の働き過ぎを防ぐためにも、この仕組みを理解しておくことが大切です。
今回は、副業・兼業における労働時間の通算ルールや、残業代との関係、注意したいポイントについて解説します。
1.副業における「通算ルール」とは?
労働基準法第38条第1項では、労働時間について、事業場が異なる場合でも労働時間に関する規定の適用について通算することが定められています。
ここでいう「事業場が異なる場合」には、異なる事業主のもとで働く場合も含まれます。
そのため、労働者が複数の会社と労働契約を結んで副業・兼業をする場合、原則としてそれぞれの勤務先における労働時間を通算して考える必要があります。
例えば、本業の会社と副業先の会社の双方で雇用されて働いている場合、それぞれの労働時間を一定のルールに従って通算し、1日8時間・1週40時間という法定労働時間を超えるかどうかなどを判断します。
ただし、実際の通算方法には一定のルールがあり、単純にその日の勤務時間を時系列で足すだけではありません。
2.なぜ労働時間を通算するの?
労働時間を通算する仕組みによって、複数の勤務先で働く場合にも労働基準法上の労働時間規制が適用されます。
例えば、本業と副業を別々に考えてしまうと、それぞれの会社では法定労働時間内であっても、労働者本人の実際の労働時間は非常に長くなる可能性があります。
副業・兼業では、収入やキャリア形成といったメリットが期待できる一方、働く時間が長くなりやすい点には注意が必要です。
厚生労働省も、副業・兼業を行う際には、企業が労働時間を適切に把握するとともに、労働者自身も各勤務先での労働時間を把握して報告することが重要としています。
3.通算されるケース
例えば、次のように複数の勤務先で労働者として雇用されている場合は、原則として労働時間の通算対象となります。
●正社員+アルバイト
●正社員+パート
●パート+アルバイト
●契約社員+アルバイト
重要なのは「正社員」「アルバイト」といった名称ではなく、それぞれの勤務先で労働基準法上の労働者として働いているかどうかです。
勤務先の会社が異なっていても、それぞれで労働時間規制が適用される労働者として働いている場合は、原則として労働時間を通算します。
4.通算されないケース
一方、業務委託として働くフリーランスなど、労働基準法上の「労働者」に該当しない働き方については、その時間は労働基準法第38条第1項による通算の対象にはなりません。
例えば、本業では会社員として働き、副業では独立した個人事業主として業務委託契約に基づき仕事をしている場合、副業の時間は原則としてこの通算ルールの対象外です。
ただし、契約書上は「業務委託」とされていても、実態として使用者の指揮命令を受けて働くなど、労働基準法上の労働者に該当すると判断される場合もあります。
そのため、契約の名称だけで判断するのではなく、実際の働き方も重要になります。
5.労働時間はどうやって通算する?
副業・兼業における労働時間は、原則として次の順序で通算します。
①所定労働時間
→先に労働契約を締結した勤務先から、後に契約した勤務先の順に通算
②所定外労働時間
→実際に所定外労働が行われた順に通算
この順序で通算した結果、法定労働時間を超えた部分が法定時間外労働となります。
この点は、副業の通算ルールで特に間違えやすいところです。
「後から契約した副業先が必ず残業代を負担する」というわけではありません。
6.残業代はどちらの会社が支払う?
副業・兼業では、「残業代を本業と副業のどちらの会社が支払うのか」という点も重要です。
原則的な方法では、まず各勤務先の所定労働時間を契約締結の先後の順で通算します。
その時点で法定労働時間を超える部分があれば、その時間については後から契約した勤務先で法定時間外労働となります。
一方、実際に発生した所定外労働時間については、所定外労働が行われた順番で通算します。
その結果、法定労働時間を超えた時間のうち、自社で労働させた時間について、その使用者が割増賃金を支払う必要があります。
したがって、「副業先だから残業代を支払う」のではなく、「通算ルールに従って法定時間外労働となった時間を自社で労働させた使用者が、その時間について割増賃金を支払う」と理解するのがより正確です。
7.36協定との関係にも注意
労働時間を通算した結果、法定労働時間を超えて労働させる場合、使用者は自社で発生する法定時間外労働について、原則として36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
また、副業・兼業であっても、時間外労働の上限規制への対応が必要です。
そのため、副業を始める際は単に「会社が副業を認めているか」だけではなく、労働時間をどのように管理するのかについても確認しておくことが重要です。
8.「管理モデル」という方法もある
副業・兼業の労働時間管理は複雑になりやすいため、厚生労働省は労使双方の手続き上の負担を軽減するための「管理モデル」という方法も示しています。
管理モデルでは、一定の方法によって本業と副業先それぞれの労働時間の上限をあらかじめ設定することで、日々、他社での実労働時間を細かく把握しなくても労働基準法を遵守できるようにする仕組みとなっています。
実際にどの方法で労働時間を管理するかは、勤務先の運用などによって異なります。
9.副業では自分自身の労働時間管理も重要
使用者には、副業・兼業の状況を確認し、必要に応じて労働時間を適切に管理することが求められます。
一方、別の会社で何時間働いているのかを勤務先が自動的に把握できるわけではありません。
そのため厚生労働省では、使用者は労働者からの申告などによって他社での労働時間を把握することとしています。労働者側も、それぞれの勤務先での労働時間を把握し、勤務先のルールに従って適切に申告することが大切です。
また、副業を始める前には、勤務先の就業規則や副業・兼業に関する届出制度なども確認しておきましょう。
10.通算ルールを理解して無理のない副業を
副業・兼業における労働時間の通算ルールとは、複数の勤務先で労働者として働く場合に、それぞれの労働時間を一定の方法で通算して労働基準法上の労働時間規制を適用する仕組みです。
一方、フリーランスなど労働基準法上の労働者に該当しない働き方については、原則としてこの通算ルールの対象にはなりません。
また、労働時間の通算方法や割増賃金の支払いについては細かなルールがあります。
「本業8時間+副業3時間だから、副業の3時間がすべて残業」と単純に判断できるとは限らない点にも注意が必要です。
副業を始める際は、勤務先の就業規則を確認するとともに、自分自身でも本業と副業の労働時間を把握し、無理のない働き方を心掛けましょう。
※副業・兼業における労働時間の通算には、労働時間制度や契約内容などによって個別の判断が必要となる場合があります。最新の制度や具体的な取り扱いについては、厚生労働省や労働基準監督署などにご確認ください。












