転職の場合でも退職金は貰えるのか
転職雑記 2022/3/15
現職を辞める際、気になる事の一つに「退職金」があります。
退職金制度は、一般的には定年退職する従業員に退職金を支給する制度ですが、法律で規定されていないため内容は企業によって様々でとても分かりにくいものです。
同様に定年前に退職する際も企業によって対応が違ったり、そもそも「退職金が無い」企業もあります。
今回は、分かりにくい退職金制度の基本情報をお伝えするとともに、転職者の退職金の扱いについてご紹介できればと思います。
1.娯楽業の退職金制度導入割合は約65%
退職金の制度は「退職金制度」や「退職給付金制度」などと呼ばれていますが、導入している企業は、厚生労働省が平成30年(数値は平成29年調査分)に発表した「退職給付(一時金・年金)の支給実態」に調査によると、企業全体の約80.5%となっています。
【企業規模(従業員数)別の退職金制度がある割合】
1,000人以上 | 92.3% |
1,000人以上 | 91.8% |
100~299人 | 84.9% |
30~99人 | 77.6% |
しかし、「娯楽業」だけ見ると、その数値はもう少し下がります。
「生活関連サービス業、娯楽業」では、「退職給付制度がある企業」は約65.3%となっています。
退職金制度の有無を知りたい場合は、就業規則や賃金規則を確認しましょう。
就業規則の「退職規定」では、退職金の支払い日や支払われる金額など、退職金についての詳細が記載されています。
2.主な退職金制度
現在、退職金制度は複数あります。それぞれで支給方法やメリットが異なるので、しっかり把握しておきたいところです。
①退職一時金制度
最も一般的にイメージされている退職金制度です。
退職する際に退職金を一括で支給されます。ただし、退職金の額や支給時期などは、企業の退職規定によって定められており企業ごとに違いがあります。
いずれにせよ、退職者がその条件を満たした場合は、退職金の支払いが行われます。
なお、このタイプの制度は会社に積み立て義務はないですが、退職金を企業が内部留保(将来的な債務として)で貯めておかなければならず、また、積立金が課税されるという欠点があります。
そのため企業の業績が悪かったり倒産したりすると、十分に退職金が支払われないことがあります。
②退職金共済制度
主に中小企業向けの制度で、企業が「勤労者退職金共済機構」に掛金を支払い、退職金の積立を行います。
従業員は退職後、退職金を共済機構から受け取る仕組みです。
企業が倒産した場合でも従業員は退職金を受け取ることができます。
「中小企業退職金共済制度」としてよく知られています。
③確定給付企業年金制度
日本で最も多く利用されている企業年金(退職金)制度です。
企業は金融機関等の運用会社に掛金を拠出し、年金資金を管理・運用するのが大きな特徴となっています。
従業員は退職後、一定期間「年金」の形で退職金を受け取ります。(全額一時金として受け取ることも可能)
なお、企業にとっては、運用の失敗等により必要な退職金が準備でない場合は、企業がその不足を補填するデメリットがあります。
④確定拠出年金制度
「企業型確定拠出年金制度」は「企業型DC」とも呼ばれ、企業が毎月掛金を積み立て、従業員が自分で年金資金を運用する仕組みです。
確定給付タイプと違い、運用成績が悪くても企業が穴埋めをする必要がないことから、企業側のリスクを減らせる制度として導入する企業が増えています。
ただし、従業員の自己責任になることから、導入には従業員(組合)と調整の必要があります。運用したお金は、原則60歳以降に一時金または年金として受け取ることができます。
また、従来の年金との併用給付も可能です。
3.「転職者(自己都合退職)」の退職金はどうなる?
【勤続3年以上で受給資格】
ここまでの退職金のイメージは、あくまで「定年退職者」をモデルにしてきましたが、転職者(自己都合退職)の場合は支給されるのでしょうか。
まず、厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」を見ると、その概況が分かります。
それによると、実際に受給するには「勤続3年以上」が一つの目安になりそうです。
表1【退職一時金受給資格付与に要する最低勤続年数の割合】(%)
表2【退職一時金受給のための最低勤続年数の割合】(%)
表1は「受給資格」を得られる年数であり、表2は実際に「受給」できる年数になります。
会社都合(リストラ等)では、資格付与と受給可能になるまでには時間差があることに注意してください。
資格付与だけなら8割以上が勤続2年未満でも退職金受給資格を得ていますが、受給には2年以内で約3割、3年で約6割となっています。
一方、いわゆる転職(自己都合退職)では表1、2いずれでも約半数の企業で勤続3年以となっています。
つまり、転職する場合に退職金を得たいと考えるなら、「3年以上の勤務」が半数の企業では必要ということになります。
また、「中小企業退職金共済制度」では、退職金受給の資格設定は以下のようになっています。
【例】中小企業退職金共済制度
(1)掛金納付月数が12月未満の場合は、退職金は支給されません。
(2)掛金納付月数が12月以上24月未満の場合は、退職金は掛金相当額を下回る額になります。
(3)掛金納付月数が24月~42月(3年6か月)の場合は、退職金は掛金相当額となります。
(4)掛金納付月数が43月(3年7か月)以上の場合は、退職金は掛金相当額を上回る額になります。
このように「長期加入者の退職金を手厚くする」ため、退職金は勤続年数が長くなるほど金額は多くなる傾向があります。
一般的な退職金制度(退職一時金制度)も同様で、勤続年数が少なければ、その分受けとる金額も少なくなる場合が多くなります。
これは勤続年数をベースに計算するためです。なので勤続年数が1桁の場合には「一時金程度」になる可能性が高そう、と思っていたほうが精神的なダメージを受けずに済むかもしれません。
4.退職金制度は減っていくのか?
近年は人材の流動性が高まり、勤続年数も短くなっています。そのことを考えると、退職金制度の必要性そのものが問われる時代になった、ともいえるでしょう。
今後、退職金制度の導入を不要と考える企業が増えていくことは大いにあり得ることで、「将来の保証を自ら行う必要性」と「実現できる能力」がますます求められているのです。