自身の労働環境について考えることの大切さ
転職雑記 2022/4/5
仕事が忙し過ぎて休みが取れず、肉体的、精神的に追い詰められたりして、慢性疲労感や不眠、食欲不振など、過労の自覚があるのであれば、職場環境を変えることも大切です。
やる気満々でも、つもりに積もって、最悪のケースは無自覚の「過労死」に繋がってしまう恐れもあるわけで・・・。
時にはご自身の労働環境を振り返り、「過労死ライン」を超えているようであれば改善を試みる、または休職や転職も視野に入れるべきかもしれません。
1.過労死の条件とは
日本の「過労死」は、働きすぎで精神や体調を崩して死に至ることですが、海外でも知られるようになり、既に英語の辞書でも取り上げられています(2002年のオックスフォード英語辞典に掲載)。
過労死に至る状況とは「どのような労働環境」なのか。
厚生労働省のHP「STOP過労死」では以下のように定義されていました。
<過労死ライン(厚生労働省)>
脳・心臓疾患に係る労災認定基準では
①週40時間を超える時間外・休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる
②発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる
(「STOP過労死」より抜粋)
月100時間の残業ともなると、起きている時間がほぼ仕事というような状況になってきます。健康を害してしまうのは当然と言えるかもしれません。
2.法定外労働時間の「抜け道」
法定外労働時間(残業時間)がどの時間に該当するのでしょうか。
これまでも何度か触れてきた労働時間ですが、改めて確認してみましょう。
①法定労働時間
労働者の労働時間は上限を一日8時間、週40時間まで。
また、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
②法定外労働時間
法定外労働時間とは、法定労働時間(法律で決められた労働時間の上限)である一日8時間、週40時間を超えて働く時間のことをいいます。
例えば、出勤時間が9時の場合、通常の労働時間では休憩1時間を入れると退社時間は18時ですが、残業を5時間すると退社時間は23時となり、これを1か月の営業日に換算すると概ね100時間(5時間×5日×4週間)となります。
平たくいえば「営業日は全て9時出社~23時退社」ということですね。
では、なぜ過労死するほどの残業時間が存在するのでしょうか?
それは、法定外労働時間の上限には「抜け道」が存在するからです。
一般的には「36協定」と呼ばれるもので、労働基準法で定める一日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせたい場合は、労使間で「36協定」を締結し、所轄の労働基準監督署に届けることで可能となります。
36協定を締結した場合の残業時間の上限は以下のように定められています。なお、2019年4月より違反企業には罰則が設けられました。
<残業時間の上限(36協定)>
月45時間
年360時間
(1年単位の変形労働時間制の場合は、月42時間かつ年320時間)
月45時間の残業時間であれば概ね一日当たり2~3時間、年360時間の残業であれば概ね月30時間程度が目安になります。
さらに、臨時的な特別な仕事があり、労使で合意があれば場合には上限時間を超えて、以下の範囲で残業が出来ることになります。
<特別条項>
年720時間
複数月(2~6ヶ月)平均80時間
月100時間未満
月45時間を超える月は年6か月まで
月100時間の残業時間であれば概ね一日当たり4~5時間、年720時間の残業であれば概ね月60時間程度が目安になります。
こうなると、もう「過労死ライン」に近くなってしまいます。
なお、原則的な残業時間の上限を超えることができるのは「臨時的な特別の事情」がある場合のみとされています。この臨時的な特別の事情として認められるものの例は以下の通りです。
<認められるもの>
予算、決算業務
ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
納期のひっ迫
大規模のクレーム対応
機械のトラブル対応
<認められないもの>
業務の都合上必要なとき
業務上やむを得ないとき
業務多忙なとき
使用者が必要と認めるとき
年間を通じて適用されることが明らかなとき
そして、残業時間の上限規制に違反した場合、以下の罰則が科せられます。
<罰則>
6ケ月以下の懲役、又は30万円以下の罰金
30万円の罰金は、金額だけ見ると企業にとってのダメージが無いように見えます。
しかし、世間的に認知されている企業であれば、報道された時には、いわゆる「ブラック企業」と認定されブランドへのダメージは甚大になるでしょう。
3.残業代より心身の健康が第一
なお、「ブラック企業」について誤解のないように付け加えると、残業が月100時間に迫るような労働環境がブラック企業なのではなく(そういわれても不自然ではありませんが)、残業時間の上限を超えたり、残業時間に対して正当な残業代を支払わず「サービス残業」させたりするのが「ブラック」のポイントとなります。
もちろん残業時間の上限を越えていれば違法ですが、残業が月100時間を超えなければ、協定があり残業代を支払っていれば違法ではありません。
ですので、そうした労働環境をどう捉えるかは「本人次第」ともいえるのです。
とはいえ、厚生労働省が発表している「過労死等の労災補償状況」によると、令和2年では労災認定802件のうち、自殺未遂を含む死亡数は148件、脳・心臓疾患による死亡認定は67件でした。
この人数はあくまで労災認定された人数であり、過労死に関する労災請求件数は2,835件ありました。
これに労災認定されなかった方なども含めると、多くの方が過労による死亡や健康被害に追い込まれていると推定されます。
多くの残業代を得たとしても、やはり体や精神を疲弊させる労働環境には問題があるといえそうです。
もし、あなたの労働環境が「過労死ライン」に近い状況であれば、今一度、働き方や仕事の目的を再考してみてはいかがでしょうか。