2021年の転職者数は減少していた
パチンコ市場規模・動向 2022/5/31
2022年前半の雇用情勢ですが、コロナ禍に加え、ウクライナ情勢の影響による物価の上昇や6年ぶりと言われる円安などを背景に厳しい状況が続いています。
今回は、総務省統計局が毎月実施している「労働力調査」から最新の転職者動向をお伝えします。
1.2021年の「転職者数」は前年比3割減
2021年の転職者数は前年から31万人減の288万人で、転職者数が300万人を割るのは299万人だった2015年以来6年ぶりです。
就業者数全体に占める転職者の割合(転職者比率)も4.3%と、東日本大震災があった2011年の4.5%を下回っています。
なお、コロナ以前の転職者数は増加傾向が続いていました。
ただし、2021年はそもそも「過去1年に離職した人」が大きく減っています。
過去1年に離職した人は延べ323万人で、前年の346万人から23万人も減っているのです。ご存知のように、政府はコロナ禍にあって経営が厳しい企業へ巨額の支援を実施しています。
2.コロナ禍での支援
例えば、政府系金融機関による実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)が2022年3月末に申請期限を迎えましたが、財務省によるとゼロゼロ融資をはじめとするコロナ関連の融資残高は政府系、民間金融機関を合わせて2021年4月末で既に約56兆円に達しており、国の予算の実に半分以上の巨額が供給されています。
こうした支援により、2021年の倒産件数は約半世紀ぶりの低水準になりました。
つまり、2021年の労働力調査における転職者数と転職者比率の大幅な減少は、『政府の助成を受けた企業などが雇用維持に動き、そもそも「離職する人が少ない」ことが影響している』と考えられるのです。
コロナ禍で転職がしにくくなった影響もありますが、同時に政府による支援が奏功して離職者が減ったことが大きいと言えるでしょう。
なお、政府系はゼロゼロ融資の取り扱い期限を「6月末まで延長する」と表明しています。
3.転職者数は45〜54歳の男性のみ増加
全体の転職者数は大きく減少しましたが、性別・年齢階級別で唯一増加している年齢帯があります。
それは45〜54歳の男性のみ、2021年平均の転職者数が20万人と前年から上昇しているのです。
ほぼ全体がマイナスになっている中で、これはかなり異例の傾向と言えます。
では、なぜ45〜54歳の男性の転職者数だけ増加しているのでしょうか?
この年齢帯は、実は最も正規雇用の比率が高い層でもあります。
転職者数は減少しているものの、転職メディア情報でも報告されているように、一部の企業ではコロナ禍による離職者の増加をチャンスと捉え、即戦力となる人材を求める企業が増加していると言われています。
この傾向が45〜54歳男性の転職者数増加を後押ししているとも言えそうです。
そして、こうした動きは前年比を下回っている他の年齢層にも波及していく可能性もあります。
4.まとめ
2022年3月時点でまん延防止が解除され、以降はコロナ関連ニュースも減少傾向にあり、徐々にウィズコロナへ移行しているように感じますが、今後も感染状況によって転職市場が影響を受ける環境は続きそうです。
労働力調査のような大きな統計の場合、転職市場における細部の情報までは分からない場合が多いですが、今後も今までにないような動きが見えてくるかもしれませんね。