転勤や異動辞令への対応
転職雑記 2022/7/28
転居をともなう転勤は、従業員にとって大きな負担になります。
できれば断りたいというのが本音の方も多いでしょう。
しかし、実際に転勤の辞令が出た場合、そう簡単に断れるものではありません。
1.転勤したくない人が約7割
転勤する場合、家族の学校や仕事はどうするのか、あるいは単身赴任するのか、また親の介護をなど、自分だけでなく家族の生活も大きく変わる可能性があり、深刻な問題になることもあります。
できれば転勤をしたくないという場合が多いのではないでしょうか。
最新の民間調査でも、「転勤の辞令が出たら退職を考えるか」の質問に64%が「考える」「やや考える」と回答。
年代別にみると、20代、30代は7割以上が「考える」と回答しています。
2.転勤辞令は基本的には断れない
しかし、残念ながら企業からの転勤辞令を断ることは、原則としてできません。
なぜなら、転勤が発生する企業の場合、就業規則に異動や転勤についての規則が明記されているからです。
そのため、企業に雇用される時点で就業規則について同意しているものとみなされているので、転勤の辞令には基本的には従はなければなりません。
もし正当な理由もなく転勤を拒否した場合、会社の辞令に従わなかったことになるため懲戒解雇処分となってしまう恐れもあります。
3.転勤を断れるケース
もちろん、正当な理由があると認められた場合は、転勤をしなくてもいいケースがあります。
転勤の辞令を拒否できる「正当な理由」は、主に次の3つが挙げられます。
①転勤はしないという契約がある
転勤のない雇用契約を結んでいる場合、本人の同意がない転勤辞令は不当なものとなります。
例えば、「地域限定正社員」のように入社時に働く場所のエリアが限定されている従業員が、そのエリアを越えて転勤辞令を受けた場合は断ることができます。
②労働者に著しい不利益がある
「本人に病気があり、かかりつけ医から離れることができない」「要介護認定の家族の面倒をみている」「子供が学校に入ったばかり」などの理由は、転勤できない特別な事情として該当する場合があります。
ただし、こうした介護、育児、出産などやむをえない事情がある場合でも、理由が認められるかどうかは、その会社の判断になります。
また、裁判になることもあり難しい対応になります。
③人事権の濫用である
報復人事のような、明確な理由もなくこれまでとはまったく違う場所で、あるいは経験の無い仕事をさせられたり、また、派閥争いにより左遷されたりなど、不当な内容と考えられる場合には、拒否できる可能性があります。
ただし、会社を相手に争わなければならなく可能性もありますので、それなりの準備が必要になるでしょう。
いずれにせよ、会社は転勤の辞令については合法的な理由を用意していることが考えられますので、辞令を拒否することは現実的には難しいことが予想されます。
4.転勤したくない場合の手段
それでも転勤したくないという場合は、次の手段が考えられます。
①組合に相談する
労働者の権利として労働組合による団体交渉を行うことができます。
もし組合が無い場合でも、労働者が2人以上いれば労働組合を立ち上げることができます。
②弁護士に相談する
弁護士に相談する方法もあります。
もちろん、裁判を起こすことになった場合、会社との関係が悪くなってしまう可能性があり、係争中は精神的に厳しい状態で企業に所属し続けることもあり得ます。
実際に裁判にするかどうかは、慎重に検討する必要があるでしょう。
③転職をする
企業からの辞令を拒否できない以上、転勤を確実に回避する方法は転職ということになります。
とはいえ、職場を変えるというのも大きな決断となりますので、冷静に判断する必要があります。
いずれにしても組織と揉めることは「その後のキャリア」も踏まえて、出来る限り避けるべきでしょう。
「内示(打診)」の段階で、直属の上司に事情を含め転勤できない旨を相談されることをオススメします。
*【内示】の段階で承諾しない
5.まとめ
近年は共働きの増加やテレワークの広がりなどを背景に、転勤制度を見直す動きも企業に広がっていますが、転勤がある企業はまだまだ多く存在します。
転勤の辞令が出てから、それを拒否したり、退職したりするのはトラブルの原因ともなるでしょう。
「転勤は避けたい」と思っているのであれば、入社前に転勤の有無について企業に確認するのがベターといえそうです。