転職と財形貯蓄制度
転職雑記 2024/10/1
転職する時、勤めていた会社で「財形貯蓄」を利用していた場合、積み立てた貯蓄はどうなってしまうのか。
将来のために頑張って積み立てた大切な給与の一部ですから、詳細を理解してしっかり対応したいものです。
1.財形貯蓄制度とは
「財形貯蓄制度」とは、厚生労働省所管の「勤労者財産形成促進法」に基づいて提供される、従業員の資金づくり支援を目的とした福利厚生のひとつです。
財形貯蓄の利用を希望すると、会社が給与から毎月一定金額を天引きし、それを財形貯蓄取扱い金融機関に払い込みます。
取扱い金融機関は各企業で選定されるので、勤務先によって金融機関や運用商品に違いがあるので確認するようにしましょう。
2.財形貯蓄制度は3種類
財形貯蓄制度は3種類あります。
①一般財形貯蓄
積み立てていく目的を問わない使途自由な貯蓄のことです。
契約時の年齢制限はなく複数の契約もできます。
②財形住宅貯蓄
55歳未満の勤労者が5年以上の期間にわたって定期的に賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立てていく持家取得又は持家の増改築(リフォーム)等を目的とした貯蓄のことです。
利子等に対する非課税措置があります。
③財形年金貯蓄
55歳未満の勤労者が定期的に賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立て、60歳以降の契約所定の時期から5年以上の期間にわたって年金として支払いを受けることを目的とした貯蓄のことです。
利子等に対する非課税措置があります。
3.利用資格
財形貯蓄制度は、勤務先がこの制度を導入していれば、基本的に雇用されている全ての人が利用できます。
ただし、「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の利用は契約時に55歳未満の人に限られます。
また、アルバイトやパート、派遣社員は「一般財形貯蓄」で3年以上、「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」で5年以上の積立期間が見込まれる等の条件を満たしている必要があります。
なお、法人の役員については一部の場合を除いて利用できません。
4.税制優遇処置
「財形住宅貯蓄」と「財形年金貯蓄」には税制優遇処置があり、両方の合計で元本550万円までは利子等が非課税となります。
ただし、非課税枠を超えると超えた分だけではなく全額の利子等が課税対象となります。
また、目的外の払い出しを行うと過去5年間に支払われた利子全てに対して課税されます。
もう一つの「一般財形貯蓄」には優遇処置はありません。
5.転職による引継ぎ
退職した場合、退職後2年以内に財形貯蓄制度がある会社に再就職した時には、手続きを行えば継続することができます。
しかし、転職先に財形貯蓄の制度がない場合は解約して払い出しをしなければなりません。
なお、積み立て資産を払い出す場合、住宅取得の目的外の解約とみなされ、利子に対して過去5年分の課税が行われることに注意が必要です。
また、積立継続の手続きにも注意点があります。
それは、以前の金融機関で継続できるかできないかによって手続きが異なる点です。
転職前の会社と同じ金融機関で継続できる場合は、転職先の会社から「勤務先異動申告書」を金融機関に提出することで積立の継続ができます。一方、金融機関を変更しなければならない場合は、新たな勤務先の指定の金融機関と財形貯蓄契約を結び、以前の金融機関から預け替えることで積立の継続ができます。
6.「財形持家転貸融資」を受けている場合は?
「財形持家転貸融資」は、財形貯蓄を行っている従業員が利用できる住宅ローンです。
財形貯蓄の残高に応じた融資を会社を通じて、長期・低利で受けることができます。
では、この財形持家転貸融資を受けた状態で、会社を辞めてしまったらどうなるのでしょうか?
会社が変わるとなれば、残債務を一括返済しなければいけない場合もあります。
しかし、残債務の全額返済の規定があったとしても、会社がローン返済を認めた場合は以下のいずれかの方法で返済を継続することができます。
・会社を通して返済を継続する方法
・会社が機構に負う債務について社員が返済を引き継ぐ方法(債務引受)
・会社が機構に負う債務について転職先の会社が引き継ぐ方法(債務引受)
なお、債務引受は機構の承認が必要で審査により不承認になる可能性もあります。
また債務引受の申請時には、会社の福利厚生担当者から財形持家転貸融資業務取扱店へ問い合わせる必要があります。
給与からの天引きで貯蓄する財形貯蓄制度は、財産形成や年金として受け取れるなど、利用できる環境にあるなら是非利用したい制度の一つです。
転職する際に引き継げるよう、事前に手続きの詳細を把握しておきましょう。