出向とは何か
転職雑記 2025/12/16

会社組織でよく見られる「出向」。人事異動の一種である出向は、単に他の会社で働くというイメージを持たれがちですが、実際には多様な目的や形態があり、企業や従業員にとってさまざまな意味を持ちます。
この記事では、「出向」の定義、目的、種類、そして「左遷」「派遣」との違いまで、幅広く解説します。
1.出向とは
出向とは、従業員が現在の勤務先との雇用関係を継続したまま、別の企業で一定期間勤務することを指します。
多くの場合は、親会社と子会社、グループ会社など、資本関係や人的つながりがある企業間で実施されますが、関係性がない外部企業への出向もあります。
2.出向の目的
出向にはネガティブな印象を持たれることもありますが、実際には以下のように多様な目的があります。
・人材の育成やキャリア形成
・企業間の人材交流
・出向先企業の管理強化や経営支援
・人員調整
・人件費削減
・グループ企業間の連携強化
出向先企業にとっても、出向者を受け入れることで業務の効率化やノウハウの共有といったメリットがあります。
3.出向の種類
出向には主に2つの形態があります。
◯在籍出向
出向元企業に在籍したまま、出向先企業で働く形態です。
雇用契約は出向元企業と維持されつつ、出向先企業とも労務提供の契約(出向契約)が結ばれます。
給与や人事評価は両社で分担されることもあります。
出向期間終了後は、原則として出向元企業へ復帰します。
◯転籍出向
「移籍出向」とも呼ばれ、出向元企業との雇用関係を終了し、出向先企業と新たに雇用契約を締結する形態です。
企業主導で行われることが多いものの、労働者本人の同意が法律上必要です。
原則として、出向元企業に戻ることはありません。
4.出向と似た言葉との違い
出向と混同されやすい用語との違いを整理します。
◯異動
「人事異動」の略で、部署や勤務地、業務内容の変更を指します。
社内で完結するケースが多く、出向も異動の一形態とされています。
◯転勤
勤務地の変更を伴う異動で、通常は同一企業内で行われます。出向とは異なり、雇用契約は変更されません。
◯左遷
明確な法律上の定義はなく、一般的には従業員にとって不利な部署や役職への配置転換を指します。
出向が実質的な左遷と受け止められることもあります。
◯派遣
労働者が派遣元企業と雇用契約を結び、派遣先企業の指揮命令のもとで働く形態です。
出向とは異なり、派遣先とは雇用契約を結びません。
5.出向を拒否できるか?
原則として、在籍出向は企業の業務命令として発令されるため、労働者は正当な理由なく拒否できません。
ただし、裁判例では、業務上の必要性や本人の事情などを総合的に判断し、無効とされる可能性もあります。
一方、転籍出向については、労働契約法により労働者本人の同意が必須とされています。
したがって、本人が同意しない限り、企業は一方的に転籍出向を命じることはできません。
なお、在籍出向であっても、できる限り従業員の同意を得て実施するのが望ましいとされています。
6.まとめ
出向はネガティブに受け止められがちですが、企業戦略や人材育成の一環として重要な制度です。
企業にとっても従業員にとってもメリットがある制度であることを理解し、適切な形で運用されることが求められます。












