「押印」と「捺印」の違い
転職雑記 2025/8/5

ビジネスや日常生活において、「押印」や「捺印」を求められる場面は少なくありません。
しかし、この2つの違いを正確に理解している人は意外と少なく、「同じ意味では?」「法的効力に違いがあるの?」といった疑問を持つ人も多いようです。
本記事では、「押印」と「捺印」の違いや意味、法的効力について分かりやすく解説します。
ビジネスシーンでの適切な使い方に迷った際の参考にしてください。
1.押印と捺印の基本
混同しがちなのが、「押印」と「捺印」は印鑑の種類の違いであるという誤解です。
実は違いの本質は、書類に記載された名前が自筆(署名)か、自筆以外(記名)かにあります。
【押印(おういん)】記名(自筆以外)+印鑑
押印とは「記名押印」の略で、名前が印刷や代筆などで記載されたものに印鑑を押すことを指します。
記名の例には、ゴム印や印刷された氏名などが含まれます。
【捺印(なついん)】署名(自筆)+印鑑
捺印は「署名捺印」の略で、本人が直筆で署名した上で印鑑を押すことです。
署名と印鑑の両方があるため、本人の意思表示としての証明力が高いとされています。
つまり、「押印」と「捺印」の違いは印鑑の種類ではなく、名前が自筆かどうかという点にあります。
2.押印と捺印の法的効力
民事訴訟法第228条第4項では、「私文書に本人または代理人の署名または押印があれば、その文書は真正に成立したものと推定する」と定められています。
したがって、押印にも捺印にも法的な効力があります。
ただし、証拠力という観点では、署名がある捺印の方が押印よりも強いとされます。
重要な契約書類では、より証明力の高い「署名捺印」が望まれる一方、社内文書や日常的な書類では「記名押印」が多く使われています。
法的効力の高さは次の順とされています。
①署名+捺印
②署名のみ
③記名+押印
④記名のみ(法的効力は極めて低い)
重要な文書には「署名捺印」を、それほど厳密でない書類には「記名押印」と、文書の重要度に応じて使い分けることが一般的です。
3.「脱ハンコ」の流れ
「脱ハンコ」とは、書類への印鑑の押印をなくす取り組みを指します。
2020年以降、行政手続きにおける脱ハンコが政府主導で進められ、新型コロナウイルスの影響によるテレワーク推進とも相まって、企業や自治体でもこの流れが加速しています。
例えば、税務署に提出する税務書類では、押印の必要が廃止されました。
内閣府の資料によると、2021年3月末時点で押印を求める行政手続き15,611件のうち、97.4%が廃止済または廃止予定とされています。
4.企業における脱ハンコの動き
デジタル化やリモートワークの普及により、多くの企業が電子署名や電子印鑑の導入を検討しています。
特に業務効率化やペーパーレス化を目的として、業界を問わず「脱ハンコ」の流れが広がっています。
5.まとめ
「押印」と「捺印」の違いは、名前が自筆かどうかにあります。
法的効力にも違いがあるため、文書の重要度や目的に応じて正しく使い分けることが求められます。
さらに、現在は「脱ハンコ」が進みつつあり、今後は電子化への対応も重要になります。
正しい知識を身につけ、柔軟に対応していきましょう。












