零細企業とはなにか
転職雑記 2025/6/10

「零細(れいさい)」とは、「数量や規模がきわめて小さい」という意味を持つ言葉です。
そのため「零細企業」とは、ごく小規模な会社を指します。
しかし、どの程度の規模を「小さい」とするのか、具体的に把握していない方も多いのではないでしょうか。
今回は「零細企業」の定義や特徴、転職先としてのメリット・デメリットについて解説します。
1.零細企業の定義
「零細企業」には明確な法律上の定義はありませんが、一般的には中小企業基本法における「小規模企業者」に該当する企業を指すことが多いです。
【小規模企業者の目安(中小企業基本法 第2条第5項)】
製造業・建設業・運輸業など(卸売・サービス・小売を除く):常時使用する従業員が20人以下
卸売業・サービス業・小売業:常時使用する従業員が5人以下
このように、従業員数が少ない事業者が零細企業とみなされます。
中小企業庁の資料によると、小規模事業者は全国で約285万3000社、従業員数は約973万人にのぼり、企業全体の約84.5%を占めています。
そのうち個人事業主は152万人です。
(出典:中小企業庁「小規模事業者を取り巻く現状と課題について(令和6年8月)」※データは2021年6月時点)
2.中小企業との違い
中小企業は、中小企業基本法で明確に定義されています。
零細企業はその中に含まれますが、主な違いは従業員数と資本金規模にあります。
【中小企業の定義(中小企業基本法)】
| 業種 | 資本金の上限 | 従業員数の上限 |
| 製造業など | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
※なお、他の法令や支援制度では異なる基準が用いられている場合があります。
3.零細企業で働くメリットとデメリット
零細企業には不安を抱かれることもありますが、意外な魅力もあります。
ここでは代表的なメリットとデメリットを紹介します。
【メリット】
①経営者との距離が近い
零細企業では経営者と直接やりとりする機会が多く、経営方針や意思決定に間近で触れることができます。
経営者の考え方やノウハウを学ぶ良い機会となるでしょう。
②幅広い経験が積める
少人数の組織では一人で複数の業務を担う場面が多くなります。
その分、業務範囲が広く、早期にさまざまなスキルを習得できる可能性があります。
③昇進・昇給につながりやすい
成果が目に見える形で評価されやすく、会社の成長を実感しながら昇進・昇給のチャンスを得ることができます。
【デメリット】
①給与水準が低い傾向
零細企業は売上規模が限定的なため、給与水準は大企業に比べて低い傾向があります。
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国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によれば、 従業員5,000人以上の事業所:平均給与 約520万円(男性674万円、女性316万円) 従業員10人未満の事業所:平均給与 約382万円(男性475万円、女性271万円) |
②業務が多く忙しくなることも
人数が限られているため、担当業務が多岐にわたり、多忙になる可能性があります。
③教育・研修制度が不十分な場合がある
小規模な組織では教育体制やマニュアル整備に十分なリソースを割けないこともあり、OJT(実務を通じた指導)が中心になる傾向があります。
④福利厚生の内容が限定的なことも
法定福利厚生(健康保険、厚生年金保険、雇用保険など)は原則として実施されますが、法定外福利厚生(住宅手当、資格取得支援など)は規模や財務状況により充実していない場合があります。
4.零細企業で働く前に確認すべきポイント
転職前には以下のような視点で企業を見極めましょう。
①事業内容と将来性
市場の成長性や事業の継続可能性があるかを確認し、長期的なキャリアを築けるか検討しましょう。
②社風や経営者の価値観
経営者の人柄や考え方が企業文化を形づくっているため、共感できるかどうかが重要な判断基準になります。
③収入・福利厚生の内容
給与水準や昇給制度、手当の有無などをしっかり確認しておきましょう。
④社会保険の加入状況
零細企業には個人事業主の経営する事業所も含まれます。
法人は原則として社会保険への加入が義務ですが、常時5人未満の個人事業所(一部業種を除く)では、適用が任意の場合もあるため、事前確認が必要です。
5.まとめ
零細企業では、一人ひとりに求められる責任や役割が大きく、自主性・柔軟性が必要です。
その分、仕事を通じての成長ややりがいを実感しやすい環境とも言えます。
転職の際には、収入や社会保険の加入状況などの労働条件、企業の成長性や方針をよく確認したうえで、納得感を持って判断を下すことが大切です。












