年俸制の注意点
転職雑記 2025/5/6

転職活動中、「年俸制」を採用している求人を目にすることがあります。
これまで月給制で働いていた方にとっては、年俸制は馴染みが薄く、制度の内容を正しく理解していないと、入社後に戸惑うこともあります。
今回は、年俸制の概要や注意点、転職時に確認すべきポイントについて解説します。
1.年俸制とは?
年俸制とは、1年間の報酬額をあらかじめ決定し、月ごとに分割して支給する制度です。
賃金の決定には、成果や業績などの評価が反映されることが一般的で、労働時間よりもパフォーマンスに重きを置いた制度とされています。
労働基準法により、給与は「毎月1回以上」支給する必要があるため、実際には年俸額を12分割または14分割して、毎月の給与として支給されることがほとんどです。
支給例:
・年俸を12分割 → 毎月均等に支給
・年俸を14分割 → 12か月分+夏季・冬季に賞与的に2か月分支給
年俸制だからといって、年1回まとめて支払われることはありません。
2.年俸制の普及状況
やや古いデータですが、厚生労働省の「平成24年就労条件総合調査」によると、年俸制を導入している企業の割合は平均13.3%。
企業規模が大きいほど導入率が高く、1,000人以上の企業では約32.6%が採用しています。
また、導入企業のうち、実際に年俸制が適用されている労働者の割合は平均16.8%と報告されており、一部の職種や役職に限って年俸制を導入している企業も多いようです。
3.年俸制の注意点
年俸制には柔軟な報酬設計や成果重視という利点がありますが、以下の点には特に注意が必要です。
①年俸の決定プロセス
年俸額は、企業と労働者の合意により決定されるのが原則です。
企業側の一方的な決定で報酬が変動するような運用は、労働契約法に抵触する可能性があります。
▼確認ポイント:評価制度・報酬変更のルール・不服申し立て方法が就業規則または雇用契約書に記載されているか。
②賞与(ボーナス)の取り扱い
企業によっては、賞与を年俸に含めて月々に分割支給している場合があります。
一方で、年俸と別に賞与が支給されるケースもあり、運用方法は企業ごとに異なります。
▼確認ポイント:「賞与は別途支給されるのか」「年俸に含まれているか」契約書で明確に記載されているか。
③残業代の扱い
「年俸制=残業代が出ない」と誤解されることもありますが、年俸制でも時間外労働に対して残業代を支払う義務があります(労働基準法第37条)。
多くの企業では、「みなし残業制(固定残業代制度)」を併用しており、一定時間分の残業代をあらかじめ年俸に含めて支給しているケースが見られます。
▼注意:「みなし残業時間」が明示されており、45時間を超える場合は慎重に検討を。
④年俸の途中変更について
原則として、年俸額は契約期間中に変更できません。
業績悪化などを理由に企業が一方的に減額することは、法的に無効とされるケースがほとんどです。
▼注意:契約後に賞与や年俸の額が変更される可能性がないか、明記されているか確認を。
⑤欠勤・遅刻・早退の控除
年俸制でも、欠勤・遅刻・早退に対して控除が行われる場合があります。
これを「欠勤控除」と呼びますが、制度の有無や控除方法は会社ごとに異なるため、就業規則を確認しましょう。
⑥退職・解雇時の取り扱い
自己都合で途中退職した場合、未就業分の年俸(残りの月分)は支給されません。
一方、会社都合での退職(整理解雇など)の場合でも、残りの年俸を支払う義務があるとは限らず、雇用契約書の記載内容に依存します。
▼確認ポイント:「中途退職時の年俸の扱い」や「解雇時の取り扱い」が契約書に明示されているか。
4.まとめ
年俸制は、成果に見合った報酬が得られる制度である一方、契約内容や運用方法を誤解しているとトラブルにつながる可能性もあります。
・転職先が年俸制を採用している場合は、以下を必ず確認しましょう。
・年俸額の決定・評価方法
・賞与の有無と支給形式
・みなし残業の時間数と超過分の扱い
・欠勤・早退時の控除
・退職・解雇時の年俸の清算方法
しっかりと雇用契約書と就業規則を確認し、納得したうえで契約を結ぶことが、安心して働く第一歩です。












