パチンコ店のATM設置にメスが入る
パチンコ市場規模・動向 2019/5/9
政府は2019年4月19日、パチンコ店のATM(現金自動預払機)撤去や、情報通信技術(ICT)を活用した入場制限策の研究を求めるなどの「ギャンブル依存症対策推進基本計画」を閣議決定した。
これはカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備の前提となるもので、昨年10月に施行された依存症対策基本法が策定を義務付けていた。各都道府県では今後、この政府計画を基に地域の事情に即した独自の計画を策定しなければならない。
パチンコ店にATMが登場したのは2007年。すぐに議論が沸き上がり、推進業者は「引き出し上限額は1日3万、1カ月8万」「ローンやクレジット機能なし」「振り込み機能なし」という一般的なATMにはない機能を付加し、議論をかわした経緯がある。
ちなみにパチンコ店でのATM設置自体は違法ではなく、風俗営業法第9条では警察に届け出をすることしか規定されていない。しかしこの批判はくすぶり続け、2020年の東京オリンピックを控えIR施設の実現に向け国内にあるギャンブル関連の規制が進められる中、元々やり玉に挙がっていたいパチンコ店のATMにもついにメスが入った格好だ。
既に3月に開かれた第2回ギャンブル等依存症対策推進関係者会議の中でも、「パチンコ店における施設内の取組」として、平成31年度以降、営業所内に設置されているATM及びデビットカードシステムの撤去推進が明記されており、今回の閣議決定で確定された。
ちなみに、このパチンコ店のATM問題だが、今から40年ほど前にも似たような風景があった事はあまり知られていないだろう。
当時、初めて世に登場したデジパチ(セブン機)が爆発的な人気を集めて社会現象になっていた。それは当初のスペックが、一度大当たりしたら、アタッカー開放の30秒以内にVゾーンを玉が通過する限り無制限に(閉店まで)大当たりが続くという代物だったからだ(打ち止め有の店を除く)。
そのため最盛期には、大当たりで出玉がバケツリレーされる中、なんと各シマに金貸し業者が陣取り、まだ大当たりを引けないお客さんはそこでお金を借りてプレイしていたという。
これはまさに「人間ATM」である。こんなスペックの機種を目の前にしたら、パチンコファンならずとも一度は打ってみたくなり、アツくなるのも当然だろう。もちろん現在とは真逆の超高射幸性機のため、たちまち規制が入り(大当たり10ラウンドや1R10カウントなど現在の機種スペックの元となるスペック)、僅か半年ほどでこの狂騒は終わりを告げた。
パチンコ店のATMは現在、全国のパチンコ店の1割にあたる約1,100店舗に広がっているという。
需要があれば供給を考える者は必ずいるわけで、お客さんの“利便性”を考えれば登場は必然だったのかもしれないし「コンビニのATMと何が違うんだ」という意見もある。
しかし、パチンコやパチスロの特性を踏まえれば露骨過ぎる存在であることも否定できないだろう。アツくなったお客さんのマインドが冷めないようにATMが設置されているという見方もできる以上、規制は必然の流れだったのかもしれない。