パチンコ・パチスロ機 保通協の適合率と検定料
パチンコ市場規模・動向 2019/5/28
先頃、4月の保通協(一般財団法人保安通信協会)によるパチンコ・パチスロ機の検定状況が発表された。
それによると平成31年4月の型式試験適合率(合格率)は、パチスロ機約15.2%と先月から一転10%台へと落ち込んだ。一方、パチンコ機は前月の約29.2%から約41.7%へとジャンプアップし、今年1月に記録した約46.8%に次ぐ高水準となった。
パチンコは新基準機の適合が進んでいるイメージだが、パチスロは6号機へのシフトに苦しむ状況が見て取れる。この適合率では、メーカーによっては売り物が無い状況も十分想定される数値だ。
ところで、このパチンコ、パチスロの保通協への持ち込みには「型式試験手数料」が発生することは、業界人なら知っている人も多いだろう。
その試験手数料は現在……
パチンコ 144万2千円
パチスロ 162万8千円
となっている。
これは一機種についてなので、同じメーカーでも3機種持ち込むと×3となり、パチンコ3機種なら試験料だけで432万6千円となる。しかもこの手数料、2013年(平成25年)の3月までは、パチンコで152万4200円、パチスロで181万200円(!!)だったのだ。
この2013年の値下げは、その2年前に総務省から保通協の試験手数料を見直すよう改善勧告を受けたことがきっかけなのだが、パチンコで約9.4%、パチスロで約9%と、渋々1割ほど下げた体である。
ちなみに、このお金は基本的に型式試験に落ちても一円も戻ってこない。審査段階で書類の不備などで検査を受ける前にメーカーに戻される場合もあるが、一度試験を受けると返金の可能性はないようだ。
大手メーカーなら耐えられるかもしれないが、中小メーカーが連続でこの検定試験に落ちると大損害を被ることは明らか。いかに高額かが分かるというものだ。
パチンコ業界とは別の話になるが、10数年前、大学の入学金、授業料の「学納金返還請求」訴訟が話題になったことがある。
入学金、授業料は払ったものの、入学前に辞退した場合は払ったお金を返して欲しいというものだ。それまで大学はほぼ返金に応じることはなく問題を指摘されていた。
この問題は平成18年末に最高裁の判例も示され、入学金をのぞく授業料の全額返還が認められている(※1.2)。これは入学要綱に返金しない規定(私的自治の原則)があっても無効ということだ。
世の中には慣習などで「一度受け取ったものは返さない」というルールがまだまだ存在している。保通協は公益性の認定を受けた一般社団法人であり、総務省の調査対象として適正化の勧告を受けたのだが、まだまだ検定料は高いイメージを残している。
令和時代を迎え、最近でいえば総務省による通信業界の大手3キャリアに対する行政指導は記憶に新しい。
パチンコ業界もそろそろ検定料の割引や優遇措置などがあっても良いのではないだろうか。
※1、学生が当該大学に入学することが客観的に高い蓋然(がいぜん)性をもって予測される時点よりも前の時期における在学契約の解除については、原則として大学に生ずべき平均的損害は存在せず、授業料の全額を返還すべきであると認定した。(最高裁判所平成18年11月27日判決)。
※2、推薦入学やAO入試などは返還を認められない可能性がある。