蔓延するステルスマーケティングとは
パチンコのユルイ雑学 2021/2/2
パチンコ業界は「広告規制」の強化によって、新装開店(新台入替やリニューアルオープンなど)以外の告知はほぼ出来なくなっています。イベント告知はもってのほかで、仮に人気ライターなどを呼ぶことが出来たとしても、来店する日にちも告知できません。
SNSで「版権キャラの誕生日」を公開するなど、“匂わす”程度で、ギリギリのラインでせめぎあいが続いています。
そして、こうした厳しい広告規制の陰でパチンコ店の「ステマ」も増えつつあります。
ステマとは「ステルスマーケティング」の略語で、自然発生的、あるいは中立的立場を装いつつ、裏では金銭を得ながらその企業や店、商品等について良い評価や口コミを拡散する行為です。分かり易く言えばネット上での「サクラ行為」や「工作員」、「ヤラセ」など詐欺的なマーケティング手法といえます。
日本で「ステマ」事案で有名になったのが、2012年の「食べログ」や「ペニーオークション」事件。金銭を支払って業者や芸能人に評価させていたことから大炎上しました。
最近でも2019年12月に、映画「アナと雪の女王2」の感想を描いた漫画が7本一斉にTwitterへ投稿され、その不自然さから「ステマ」だとネットで騒ぎになりました。
配給元のウォルト・ディズニー・ジャパンは当初「ステマという認識はない」という回答をしていましたが、同月5日にホームページに謝罪文を掲載し、全面謝罪に追い込まれました。
ステマの発覚によってSNSやブログ等のコメント欄には批判コメントがあふれ、企業の評判は大きく低下し、関わった芸能人などは“炎上”して多くの場合はその立場を失っています。
1.ステマの主な手法は2種類
①一般人を装う
一般の消費者を装って商品のイメージアップを行う方法です。多くは専門の業者を使い、自社商品を褒める口コミを投稿、一般の消費者を装って商品を紹介します。
時には自社社員のSNSで同様のことをする場合もあり、いずれにせよステマとして扱われます。
②有名人を使う
タレントなど有名人を使い、SNSなどの情報メディアで商品を紹介します。
どちらも根本的な問題となるのが、その情報が「広告であることを隠している」という点です。
金銭をもらって紹介する「広告」でありながらも、あたかもその消費者や有名人が個人的かつ実際にその商品やサービスを使った感想のように情報を発信するのは、一種の「詐欺」と言えます。
最近ではこうしたステマを防ぐため、インスタ等では「#SP」「#PR」「#AD」といった表記により、SNSへの投稿やブログの記事が企業広告であると明記する方法が取られるようになりました。
しかし、海外では義務化されているものの、日本ではステマの規制についてまだまだグレーな部分が多く残っており、こうしたタグを付けなかったり、つけても他のハッシュタグに埋没したりと、効果は上がっていないようです。
2.パチンコ業界でもステマが激増
パチンコ業界でもここ数年、ステマとみられる事案が激増しており、特にTwitterで横行しています。
例えば、「今日○○店は〇〇が万枚出ました」とか「○〇はお祭り状態です」など、店名を入れて紹介したり、「出玉グラフ」を掲載するパターン。
これがどれも個人アカウントによる自然発生的なツイートなら問題ないと言えますが、それらのツイートをよく見ると複数の同一アカウントだらけで、かつ同じパチンコ店を集中的にツイートしていて明らかにステマと分かる内容だったりします。
店内でわざわざ他人の出玉を堂々と良いアングルで写真を撮ったりしていて、もうバレバレです・・・。
さらに「リツイート」する人や「フォロワーの水増し」なども行われており、それらのアカウントをチェックすると、いくつかの同じアカウントで回していることがすぐ分かります。しかも、どれも該当パチンコ店の話題以外はほぼコメントしていません。
中には無関係のアカウントも交じって(知らずに巻き込まれてコメントやフォローしている)いますが、ほとんどは複数の同一アカウントが集中してる、とか。
現代のSNSを操る若い世代がこのようなステマに気付かないわけがなく、スルーするのが大半で、集客目的であるのにむしろ逆効果となってしまいます。
一方で、ステマと分かったうえで来店する人は、企業(店舗)姿勢とか価値観とかは一切関係なく「勝てればよい」わけで、その店舗のことはどうでもよく、ファンになる、固定客になる見込みは薄いともいえるでしょう。
店舗側の意図が透けて見え、「炎上ネタにすらならない」といった方がしっくりくるくらい割り切っており、冷ややかな感じです。
3.まだまだ緩い日本のステマ規制
海外では多くの国で規制法がありますが、日本では直接取り締まる法律がまだありません。
しかし、専門家の間では現行の「景表法」や「不正競争防止法」などに抵触する可能性が示唆されています。
ある調査では、消費者の8割が友人や家族などによるクチコミが信頼できると答えており、更に7割がインターネット上の消費者レビューを参考にすると回答しています。
これだけステマ問題が話題になっていても、いまだネット上の口コミの威力は依然強いのです。
それだけにステマが無くならないのかもしれませんが、寧ろユーザーとの信頼関係を悪化させるだけです。
パチンコ店の広告宣伝は厳しい規制によって苦労は絶えませんが、いつの時代も「虚」による手法は一時の利を得られたとしても「実」がなければ衰退はさけられない、ということに変わりはありません。
コロナ禍の今、このようなご時世だからこそ信頼関係はより大切になってくるはずで、アプローチ方法も十分に気を配る必要がありそうです。