給与の「手取り」とは?
転職雑記 2022/4/21
給与日に振り込まれた給与額について、思っていたより少ないと感じたことはありませんか?
「手取り給与」は支給総額から税金や保険料などが控除されるため、額面どおりの金額を受け取れるわけではありません。
額面給与から実際どのようなものが差し引かれるのか、どうしたら手取り給与が計算できるのかなど、給与の総支給額と手取りなどについて解説していきます。
また、転職活動などで目にする求人情報について「額面」「手取り」どちらが記載されているのか、そして給与について気を付けておくべきことは何かなどもお伝えします。
1.額面金額が給与の総支給額だが…
給与とは「総支給額」のことを指します。「額面○○円」という言い方もよくされますね。
「総支給額」=「額面給与」であり、会社から支給される給与総額の内容は、基本給のほかに時間外手当や企業ごとに定められる手当などになります。
つまり「額面給与=基本給+各種手当」という内容です。しかし、実際に振り込まれる金額はこの総支給額ではありません。
2.手取り給与が実際に振り込まれる金額
企業に所属している場合、給与明細を受け取ったり、社内Webで確認できたりしますが、その明細に記載されている総支給額が、いわゆる『額面』です。
額面給与の金額は、そのままあなたの口座に振り込まれるわけではなく、例えば社会保険料や源泉所得税、住民税などが引かれて、結果として支給額が決定されるのです。
計算式で表すと、「手取り給与=額面給与-(税金・保険料)」となります。
では、額面給与からは、どのようなものが引かれて手取り給与となっているのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
・健康保険料
健康保険は、民間企業などに勤める人とその家族が加入する医療保険制度で、健康保険料は被保険者である従業員と会社が半々で負担し合っています。
健康保険料は標準報酬月額の約10%であり、会社と労働者が半分ずつ負担するため、実際に引かれるのは約5%です。
健康保険料の金額は標準報酬月額によって異なり、全国健康保険協会か健康保険組合に加入しているかによっても異なります。
なお、基本給に時間外手当や通勤手当を加えた1ヵ月の総支給額である報酬月額を保険料額表にあてはめ、1~50の等級に分けた金額を標準報酬月額といいます。
出張手当や年3回までの賞与など、臨時に支給されたものは報酬月額に加算されません。
・厚生年金保険料
厚生年金保険は、65歳から支給される老齢厚生年金のための年金制度で、勤務している会社を通じて日本年金機構に納めます。
老齢厚生年金のほかに、病気やけがで障害が残ったときに受給する障害厚生年金や、加入者が亡くなったときに遺族が受給する遺族厚生年金なども、ここから支給されることになります。
健康保険料と同じく、会社と本人が半分ずつ負担することになり、標準報酬月額で納める額が変わります。
厚生年金保険料は標準課税月額の18.3%ですが、健康保険料と同様に会社と労働者が半分ずつ負担するため、実際は9.15%が引かれることになります。
厚生年金保険の負担率は段階的に引き上げられていましたが、2017年9月に固定されました。
・雇用保険料
雇用保険は、労働者が失業した際の生活の安定や再就職の促進のために、失業給付金や教育訓練給付金の交付を行う保険制度です。
雇用保険料の負担率は事業によって異なります。基本的に額面給与の0.3%が徴収されますが、農林水産業や清酒製造業、建設業に限っては0.4%です。
なお、金額は標準報酬月額ではなく各種控除がされず、時間外手当や賞与などが含まれた額面給与(報酬月額)であることに注意が必要です。
・介護保険料(40~64歳)
40歳以上になると、介護保険の加入義務と保険料の負担が義務付けられています。
40~64歳の従業員が対象で、健康保険と同様に標準報酬月額に保険料率を掛けて算出され、会社と従業員が半分ずつ負担します。
介護保険の保険料は標準報酬月額の1.79%ですが、労働者と会社が半分ずつ負担するため、実際に支払うのは0.895%です。
40歳以上が加入する保険ですから、新社会人の場合はしばらく負担することはないでしょう。
・所得税
所得税とは、課税所得に応じて国から徴収される税金です。課税所得とは額面給与から所得控除を引いた額のこと、所得控除とは、それぞれの所得控除の要件にあてはまる場合に所得(額面給与)から一定の額を差し引くもので、基礎控除、配偶者控除、扶養控除など15種類あります。
なおこの徴収金額は「暫定金額」で、皆さんご存知の「年末調整」で支払った税金が戻ってくる(還付)場合があります(逆に追加徴収される場合もあります)。
所得税額は前年1年間の課税所得に税率を掛けて計算され、毎月の給与から「源泉徴収」という形で天引きされます。
正しい税額に合わせるため、毎年12月に年末調整を行う必要があるのです。
・住民税
住民税は、1月1日時点で住んでいる都道府県、自治体に納める税金です。
各自治体が前年の収入から税額を決定し、毎月の給与から天引きされます。
住民税は収入がおおよそ100万円以下であれば非課税となるため、前年の給与がない新社会人などは、2年目から住民税の天引きが始まります。
・その他
企業によっては退職金の積立や労働組合費などが、額面給与から天引きされることがあります。
3.手取り給与は凡そ額面給与の75~85%
収入が増えるほど徴収される税額は上がり、扶養家族の有無や事業内容によって保険料率などは変わります。
大体年収600万円以下位であれば、ざっくり手取り額が知りたい場合は、額面給与に0.75~0.85を掛けると計算できます。
なお、高額所得者は累進税率なので手取りはもっと少なくなります。
4.求人情報は「額面」で記載されいる
求人情報は「額面」と「手取り」のどちらが記載されているのか?については「額面」が記載されています。
保険料や住民税などの金額は人によって異なるため「手取り」での表記は難しいのです。
ですので求人情報の給与額はその企業で働くことで確実に得られる『額面』が記載されていると考えておきましょう。
ただし、額面の内容は基本給のほかに手当などを含めた金額を記載しても良いことになっているので内訳など詳細について知りたい場合は企業に問い合わせるなどして確認する必要があります。
5.まとめ
給与が振り込まれたら、手元の給与書類などで内訳を確認するようにしましょう。
何が足され、何が引かれているのか「変化」を確認することは大切です。
支払った保険料などを把握でき、年間金額などを計算することもできます。
将来のライフプランを打ち立てていくという意味でもおススメです。