ナッジ理論|マーケティングに役立つ行動心理学
パチンコ店の仕事・スキル 2020/9/17
ちょっとの一工夫で劇的変化を促す「ナッジ理論」
これは比較的新しい概念です。
ナッジ(nudge)とは、“相手の注意を引くために、肘で軽く突く”という意味で、2017年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者のリチャード・セイラー博士と、ハーバード大学のキャス・サンスティーン教授が、2008年に提唱した理論です。
そのポイントは、「肘で軽く突く」というような“ちょっとしたキッカケ”によって人の行動を劇的に変えたり、誘導するというもの。
人は基本的に物事に対し「何かした方がいい」と+αな思いを持つものですが、つい忘れてしまったり、先延ばしにしたりする場合が多いのが実情です。そこで「ナッジ効果」は有効に働きます。
ちょっとした事ですから、低コストで大きな経済効果をあげることができ、かつ強制ではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す手法であることから、世界中で応用されています。
「ナッジ理論」の具体例をいくつか挙げてみましょう。
みなさんは、コンビニで並ぶところにある足跡を見かけたことはありませんか? また、お店や公共のトイレで「いつもトイレをきれいに使っていただき、ありがとうございます」という文言の張り紙を目にしたことがありませんか?
これらはまさに「ナッジ理論」を実践した好例です。
「並んでください」と店員が指示したわけでもないのに、人は足跡マークがあるだけでそこに並ぶようになり、「ありがとうございます」と感謝の言葉を目にすると良心が働いて、「キレイに使うようにしよう」と思うのです。
まさに「ちょっとしたキッカケ」で、行動を大きく変えることに成功しているのです。
また、レストランのメニューで、通常のメニューとは別に「オススメメニュー」を見かけた事があると思います。これは、意図的に一部のメニューを「オススメ」として表示してお客様が選びやすくしているのです。
海外でも多くの実践例があり、特に有名なのがイギリスの例です。社会問題解決のためにこのナッジ理論をいち早く活用しています。
例えば商店街のシャッターに子供の絵を描くことで犯罪や迷惑行為が20%も減らしています。これは日本でも同様の試みが見られますね。
また、ロンドンにおけるタバコのポイ捨て問題解決の手法は特に有名です。
タバコの吸い殻入れにアンケートボックスを設置することにより、なんとポイ捨てを45%も減らすことに成功しました。
その質問内容はユニークで、「現在のサッカーで世界最高のプレイヤーと言ったら?」という質問で、クリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシという2つの吸い殻入れを設置したところ、タバコのポイ捨てが劇的に減ったのです。
これまでタバコの吸い殻入れを意識しなかった人々に興味を与えることで、ポイ捨て問題を大きく改善させたのです。
日本でも、ある行動を抑制したい場合、その禁止区域に「鳥居」のマークを付けると、劇的に禁止行動が減るという実例もあります。日本人は神社などの「神域」では“身を慎む”ため、そうした行動心理を応用しているのです。
現在のコロナ禍での行動指針にも見受けられますね。
例えば「県境を越えての移動の禁止」や「帰省は控えてください」と言われると抵抗がありますが、「帰省はWEBなどオンラインで」と言われると、「飲み会もオンラインの時代だよね」と考えたり、同様に「不要な外出は控えて」という指示も、「飲食は宅配も利用しましょう」と言われると、こちらもデリバリやウーバーを使ってみようという考えにもなります。
「禁止事項」であれば「ダメ」という表現だけではなく、「〇〇するなら、こうしてください」という具体的な行動を伝える表現にすることで人の行動も変わってきます。
「文言や言い方を変える」だけでも、人々の行動に変化をもたらすことができるのです。
ちなみに「ナッジ理論」は、パチンコ店でも応用されています。
例えば景品コーナーに「足跡」を付け、自然とお客様が並ぶようになっている店舗もあります。また、「オススメ機種」のような誘導表現はダイレクトに行うと広告規制に引っかかってしまうので難しいところではありますが、「機種の特徴や演出」「遊び方」などを分かりやすく案内することで同様の効果を発揮することもできます。
このように「ナッジ理論」は応用の幅がとても広いのですが、ポイントは人の行動、パチンコ店であればお客様の行動心理の理解を深めたうえで実施していくことにあります。
改めて顧客視点で考えることの大切さがわかりますね。