社会保険と労働保険の違い
転職雑記 2021/10/21
転職先の企業を探す時、社会保険がしっかりと整っている会社というのも重要なポイントですね。
求人内容を見ていると「社会保険完備」という会社もあれば「労働保険有」としている会社もありますが、この2つはどう違うのでしょうか?
今回は、「社会保険」と「労働保険」の違いや加入条件について調べてみました。
1.社会保険と労働保険の違いとは
社会保険も労働保険も社会保障制度の一部であり、従業員の生活の一部を保障するという点では同じです。
しかし、実際の目的や内容は全く異なります。
まず労働に関わる保険には大きく次の4つがあります。
・「健康保険」
・「厚生年金保険」
・「労働者災害補償保険(労災保険)」
・「雇用保険」
求人条件などに見られる「社会保険完備」という場合は、これら4つの保険すべてに加入できることを意味します。
一方、「労働保険あり」の場合は、「労働者災害補償保険(労災)」「雇用保険」2つだけ加入できることを意味します。
2.社会保険の詳細
社会保険には多くの種類がありますが、主なものに「健康保険」や「厚生年金保険」などがあります。
特に健康保険の恩恵を受けている人は特に多いでしょう。
病気で病院を受診した場合、その費用の自己負担は3割(小学生未満と70歳~74歳が2割、75歳以上が1割)となり、残りは健康保険が負担していることは広く知られています。
そして厚生年金保険は企業で働く多くのサラリーマンが加入しています。
老後の生活を保障する「年金(老齢年金)」が有名ですが、他にも病気やケガで障害を負った人に支給される「障害年金」や、被保険者が死亡したときに遺族に支給される「遺族年金」などがあります。
社会保険の目的は、誰にでも起こりうる病気やケガ、そして一定の年齢に達したときの生活を保障することにあります。
社会保険の詳細は以下の通りです。
大きく分けると公的医療保険制度と公的年金制度及び介護保険制度の3つがあります。
①公的医療保険制度
これは、加入者とその被扶養者が病気や怪我などで治療を受ける必要があるときに保障する保険制度です。公的医療保険制度の種類は、以下のとおりです。
・健康保険
企業に雇用されている者が加入する医療保険制度をいいます。
企業グループで設立する「健康保険組合」と、健康保険組合を設立しない企業が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」に分けられます。
・共済組合等
国家、地方公務員や、私立学校の教職員が対象の医療保険制度です。
国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会または日本私立学校振興・共済事業団などで、保険者は共済組合です。
・船員保険
船員やその被扶養者のための公的な医療保険制度で、保険者は協会けんぽです。
・国民健康保険
農家や自営業者、健康保険制度に加入していないフリーで働く人、退職者などを対象とした公的な医療保険制度で、保険者は市町村や国民健康保険組合です。
・後期高齢者医療制度
75歳以上の高齢者が病気やけが、あるいは死亡した場合に給付を受けられる医療保険制度で、保険者は後期高齢者医療広域連合です。
②公的年金制度
これもよく知られた制度ですね。
高齢や障害、家計を担う家族の死亡等による収入の減少を保障するために存在します。公的年金制度の種類は、以下のとおりです。
・国民年金
国民年金は、すべての国民に共通する年金制度です。
老後を迎えたときや怪我や病気で障害が発生したとき、加入者自身や加入者であった者が亡くなったときに必要な年金が支給されます。
・厚生年金保険
国民年金がすべての国民を対象とするのに対し、厚生年金保険はその名のとおり「保険」的な性格が強い内容の年金制度で、主に会社員が保険の加入者です。万一の場合は被保険者やその家族を対象に年金が支給されます。
国民年金に上乗せして支給されます。
③介護保険
要介護認定を受けた65歳以上の人や、40歳以上64歳以下で特定疾病による要介護認定を受けた人が受けることができる保険医療・福祉サービスに係る給付制度です。
【加入条件】
社会保険のうち「健康保険」では、事業所を単位に適用されます。健康保険の適用を受ける事業所を適用事業所といい、法律によって加入が義務づけられている「強制適用事業所」と、任意で加入する「任意適用事業所」の2種類があります。
また、従業員個人の適用条件もあります。「社会保険」は、フルタイムの正規雇用の場合に適応されますが、アルバイトやパートといった雇用形態に関わらず、以下のいずれかの条件を満たす場合は適応となります。
・1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正規雇用の4分の3以上
・次の5つの条件を満たす場合
① 週の所定労働時間が20時間以上
② 勤務期間が1年以上(またはその見込みがある)
③ 月額賃金が88,000円以上
④ 学生でないこと
⑤ 従業員501人以上の企業に勤務していること
※厚生年金保険の被保険者数が常時500人以下の事業所の場合
① 労使の合意があること(従業員の半数以上と事業主の同意)
② 前項4つの条件を満たすこと
なお、令和4年10月から特定適用事業所の適用要件が「501人以上の適用事業所」から「101人以上の適用事業所」へ、短時間労働者の雇用期間の要件については「雇用期間が1年以上見込まれること」から「雇用期間が2ヶ月以上見込まれること」に改正されています。
3.労働保険の詳細
労働保険は、労働基準法のもとで業務を行う労働者をサポートし、生活を保障するための制度です。
①労働者災害補償保険(労災保険)
労働者が業務災害や通勤災害にあった場合、労働者本人や遺族(労働者が死亡した場合)に保険給付を行います。事業主は、法人か個人事業所かを問わず、労働者を雇用する場合は必ず加入しなければなりません。
労災保険料は全額を会社が負担し、毎年定期的に国に対し支払いを行うことが義務づけられています。従業員が業務中に怪我や病気をした場合には、国が会社にかわって治療費等の補償を行います。
②雇用保険
雇用保険は、労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために設けられた制度です。事業主は、原則として、以下の雇用保険の資格取得要件を満たす労働者を雇用する場合は必ず加入しなければなりません。
【加入条件】
労働者を一人でも雇っていれば、その業種や規模などに関係なく雇用保険の加入手続きが必要となります。
① 雇用期間が31日以上見込まれること
② 労働時間が週20時間以上
③ 学生や顧問など適用除外者でないこと
また、雇用保険には主なものとして、失業者の生活保障のための「求職者給付(失業保険)」がよく知られていますね。
その他、育児や介護を行う労働者や高齢者の雇用が継続されるよう支給される給付金や、労働者自らの職業能力を高めるための教育訓練を受講した場合に支給される給付金など、雇用に関するさまざまな場面でサポートが受けられます。
保険料は、会社と労働者が一定の割合で負担をしています。
4.まとめ
社会保険制度は時代のニーズに応じて人々が暮らしやすく、また働きやすいようにサポートする制度です。
転職先の企業が、どのような社会保障制度を利用しているかも企業選考の重要なポイントになります。
社会保険と労働保険の違いをきちんと把握して、雇用条件をチェックしましょう。