通勤手当と旅費交通費の違いとは
転職雑記 2021/11/4
求人内容にさりげなく記載されている「交通費支給」や「通勤手当」の文言ですが、この内容には大きな幅があることをご存知でしょうか。
これらの支給は税制が複雑に絡んでいるため、会社の都合によって同じように見えて内容に大きな違いがあることがあります。
今回は、通勤手当や旅費交通費の内容や違いについて解説します。
会社が従業員に支給をする「交通費」には、「通勤手当」と「旅費交通費」の2種類があります。
どちらもカテゴリーは同じ交通費であり、また会計上の勘定科目は「旅費交通費」です。
会社にとっては社会保険料や所得税の観点から、この二つは明確に区分する必要があります。
1.通勤手当(通勤費)とは?
「通勤手当」とは、通勤にかかる費用を従業員に手当として支給するもの。支給額は通勤にかかる費用の全部、または一部になります。
多くの企業では、自宅から勤務場所までの交通費として一定金額を、月々の給与に上乗せをする方法で支給しています。
通勤手当は、どんな会社にもある手当の一つと思われるかもしれませんが、実は通勤手当の支給は企業にとって義務ではありません。
労働法では通勤手当の支給が義務付けられていないのです。また、通勤手当の支給方法や支給時期等も会社の判断によるものとなっています。
性質としては福利厚生としての費用になります。
そのため、通勤手当を導入していない企業もあります。
企業に通勤手当の支給義務が発生するのは、「就業規則」や「給与規定」などで「通勤手当を支給する」と規定してある場合です。
求人に「通勤手当」がある場合は、社内規則で規定されているということですね。
2.通勤手当は基本非課税
企業が従業員に支払う「手当」と名が付くものは、基本全て従業員個人の「所得」とみなされ「課税対象」となっています。一般的な手当としては「残業手当」「役職手当」「住居手当」「家族手当」「資格手当」等がありますが、これらに対し「通勤手当」は非課税分が認められているという特徴があります。
通勤手当を支給する場合は「現金支給」と定期券の「現物支給」などの形式があり、以前は通常1カ月10万円まで非課税扱いとすることが認められていました。
しかし、平成28年度の税制改正によって非課税限度額(免税限度額)の改正が行われ、上限額は10万円から15万円に引き上げられました。
3.1か月あたりの非課税限度額
区分 | 非課税額(H28年1月1日以後適用) |
1.交通機関・有料道路 | 150,000円(合理的な運賃等の額) |
2.自動車、自転車等交通用具を使用 | 55km以上 | 31,600円 |
45~55km未満 | 28,000円 | |
35~45km未満 | 24,400円 | |
25~35km未満 | 18,700円 | |
15~25km未満 | 12,900円 | |
10~15km未満 | 7,100円 | |
2~10km未満 | 4,200円 | |
2km未満 | 全額非課税 |
3.交通機関利用時の通勤用定期乗車券 | 150,000円(合理的な運賃等の額) |
4.交通機関・有料道路他、交通用具使用 | 150,000円(合理的な運賃等の額と2の合計額) |
(国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げ より)
4.旅費交通費(交通費)とは?
一方、通勤手当と類似する言葉に、「交通費」があります。
これは、営業や出張といった業務遂行のために電車、バス、タクシーなどの交通機関を使用した際に発生する移動費のことです。
通勤手当と違い、従業員が自分の利用した交通費を立て替えて支払っておきます。これは労働者には認知度が高いのではないでしょうか。
週締めや月締めで経理部などに請求して精算するのが一般的ですね。
ちなみに、「通勤手当」には所得税法上「非課税枠」という特典があると前述しましたが、「非課税は所得税に関すること」のみで、企業が支払う「雇用保険料」や「社会保険料」の算出には、通勤手当の金額を含めて計算します。
従業員の支払うべき社会保険料は、例年4、5、6月の給与等の平均値を基礎とした金額を企業が届けることによって、向こう一年の金額が決定します(算定基礎届)。
この平均値には通勤手当が含まれ、給与と通勤手当を含む各種手当の金額が大きい人ほど、支払うべき社会保険料が多くなる仕組みです。
ところが、「旅費交通費」はこの算定に影響を与えません。
つまり、「交通費」は旅費交通費に該当した方が、従業員の社会保険料負担額、会社の社会保険料負担額に影響を与えないため、有利な取り扱いになります。
企業はこれを有効活用することで従業員の税負担を軽減することのみならず、税金を軽減する「節税効果」を狙っているのです。