一銭パチンコの興亡
パチンコのユルイ雑学 2022/3/31
2022年現在、パチンコ店にあたり前のように存在する1円パチンコ(1,000円で1,000玉の貸出)や5円パチスロ(1,000円で200枚の貸出)といった低貸し玉コーナーや専門店。
リーマンショック、東日本大震災、スマホ普及率など社会背景に伴うマインドや時間消費、遊興費選択の変化。
遊技機規則改正による出玉性能の低下、イベント広告規制による営業力低下に伴う期待感の減少。
外的要因、内的要因それぞれによってユーザー離れが加速していく中で、新規ユーザーの獲得や既存ユーザーの滞留時間増加など、遊技参加率を高めるための施策として、「少ない投資額で遊べる」遊技の選択肢として全国のパチンコ店に普及していきました。
貸玉レートがパチンコ4円やパチスロ20円が当たり前だった時代は遠くなりつつあり、さらに、格安レートの「0.5円パチンコ」や「0.2円パチンコ」の店舗も出現しています。
1円の下は「銭」の単位になりますが、「銭」は現在使われていません。0.5円ならレートは一玉が50銭、0.2円なら20銭です。
銭のレートが分からない人のために説明すると、1円は「100銭」の計算になります。
一体、最安レートはどれくらいなのか??
歴史をさかのぼってみたところ、なんと「一銭パチンコ」が存在。0.01円で貸出していた時代がありました。
ちなみに約100年前のことで、「0.01円」という額面だけでいえば「低額レート」の印象ですが、その「実態」は印象と真逆でした・・・
1.「一銭パチンコ」の登場
昭和の初め(1927年頃)に登場したパチンコの原型は、露店での子供の遊びでした。
なので景品はお菓子程度。正村ゲージもまだ無い時代ですから盤面もバラ釘状態だったようです。
もちろんパチンコの名称もまだ無く、「ガチャンコ」「パチパチ」などと呼ばれてる時代で、弾くのは玉ではなく、なんと「一銭銅貨」。その後本格的な「一銭パチンコ」(1932年頃)が登場し、たちまち大人の人気を集め、パチンコ店は全国に広がっていきます。
ちなみに、この一銭パチンコ、かなり過激です・・・
投入口に一銭銅貨を入れると玉が出て、打った玉が入賞すると一銭銅貨あるいはメダルが払い出されるという、まさに射幸性を煽りまくるもの。流通している貨幣が払い出されるのは過激としか言いようがありません。
「お金を弾いてお金が出る」という“掟破り”は、もちろん直ぐに警察の規制を受けました。
ただし、その理由がまた戦前らしく「皇室の御紋の入った硬貨を遊技に使用するのはけしからん」というもの。
戦前にあった「不敬罪」の類です。
まして「食べ物やお金を粗末にしてはいけない」という感覚は万国共通ですから、「お金で遊ぶなんてもってのほか」となります。
だからこそお金をコインやメダルといった「トークン=代替紙幣」に変えて遊ぶようになったのでしょう。
2.昭和初期の「一銭」の価値は現代では「8円」ほど
ところで、当時の「一銭」は現代ではどれくらいの価値があったのでしょか。
三菱UFJ信託銀行の「お金の育て方」を参考にすると、日本銀行調査統計局の「企業物価指数」(戦前基準指数)では、1927年(昭和2年)の物価指数は1.099。
2019年(令和元年)の698.8と比べると、約636倍の差があります。つまり、昭和初期の1円は今でいう636円の価値があるといえます。
しかし、これを実勢の価値基準で見るとちょっと違った数値になります。
例えば1959年(昭和34年)当時では小学校の先生は初任給として2万円近くをもらっており、初任給が2万円であったときの1円の価値は10円ほどです。
また、白米の値段を元にしてみると、昭和元年で白米は3円20銭だったといわれています。
これを現在の白米の価格である2,618円と比べると、当時の1円は今でいう818円程度だったといえそうなので、一銭は現代の8円くらいということになりますね。
8円だとキリが悪く少々分かりづらいので、現代の硬貨である「10円」で考えると・・・
1玉10円で打ち込んで同額かそれ以上が払いだされるということに。
現代のパチンコ貸し玉の最高レートが4円ですから、倍以上の「超高額レート」で運営しているということですね。「現金」であることを踏まえると凄まじく射幸性が高い、ということが伺えて来ます。
なお、明治、大正、昭和ではお金の価値が大きく変動しています。
一銭の価値も明治時代では約200円、大正時代では約40円ほどでした。
3.現代は少ない投資額で遊べる環境は整っている
いずれにせよ、現金を遊技に使用すること自体が過激だったわけですから、この一銭パチンコは規制を受けメダル式パチンコへと移り変わります。
そして最終的には昭和17年に太平洋戦争のため全面禁止になる・・・と。
現代では、一銭パチンコならぬ20銭(0.2円)、50銭(0.5円)パチンコがあり、まさに「少ない投資額で遊べる環境は整っている」といえそうです。
が、実際の「遊技体感≒投資価値」についてはまた別の話しで、年々「低貸しレート」のパチンコ、パチスロ稼働率は下がっている印象があります。
「一銭パチンコ」のように滅亡しないことを祈るばかりです。