パチンコメーカーの冠名と商標
パチンコのユルイ雑学 2022/7/22
企業の商品やサービスなどを一目で伝えるものに「商標」があります。
この商標は文字や図形の他に、記号、立体的形状、色彩、音などもあり、日々私たちの周りに溢れています。
パチンコ業界で知られる商標では、機種に付随するアイキャッチ的な「冠名」が有名です。
みなさんはメーカーの「冠名」をどれだけ知っていますか?
今回は、パチンコメーカーの冠名について調べてみました。
1.「商標」は知的財産権
まず、商標権について触れてみます。
社会の幅広い知的創造活動の成果について、一定期間の独占権を与えるようにしたのが「知的財産権」の制度です。
知的財産権は、様々な法律で保護されています。
特許権: 特許法
実用新案権:実用新案法
意匠権: 意匠法
商標権: 商標法
知的財産権のうち、特に「特許権」「実用新案権」「意匠権」及び「商標権」の4つを「産業財産権」と言い、またそれぞれの法律を特に「知財四法」と言います。
2.商標権の取得
企業が自社のオリジナル商品に付ける商品名などは、多くの場合「登録商標」の申請を特許庁に出願して「商標権」を取得しています。
登録商標はたくさんありますが、著名なものを挙げてみましょう。
「宅急便」 →ヤマトホールディングス
「セロテープ」 →ニチバン
「ウォシュレット」 →TOTO
商標として登録されると、その商品やサービスを扱う事ができるのは、原則として商標権取得者だけになります。
また、第三者が無断でその商標を使用した場合、刑事罰の対象になります。
例えば「宅急便」ですが、この文字や言葉は基本、ヤマトHDでしか使うことができません。
ですので、こうした荷物配送システムを表現する場合には、「宅急便」とは書かずに「宅配便」という一般的な表現を使うことになり、また、そうした仕事をする場合も自社の配送事業に「宅急便」の名称を付けることは難しくなります。
ちなみに、例外的に「魔女の宅急便」はスタジオジブリが登録商標を持っています。
では、「宅配便」はどうでしょうか?
こちらは多くの登録がありますが、「宅配便」そのものはできないようで、登録商標は全て「〇〇〇宅配便」となっています。
3.商標登録の目的
商標登録制度の大きな目的は、企業などが販売する商品やブランド、サービスなどを保護すること、消費者が商品を取り違えないよう商取引の公正を保つという2つの大きな役割があります。
分かりづらいですが、以下に該当する商標は、登録を受けることができません。
1 自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
2 公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの
3 他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの
※「標章」とは「マーク」そのものをいいます。
(以上、特許庁HPより)
要約すると、
1 既存の商品・サービスは不可。
2 一般的に流布している文言などは不可
3 既に登録されているものと同じ、あるいは似ているものは不可
つまり、既存のものは当然ですが、消費者が間違って商品を購入してしまう恐れがあったり、一人が独占することが不当であると考えられるような文言なども、商標登録できないルールになっています。
1については、取得者が類似の文言も数多く登録していたり、既存商標と混同されてかえってデメリットが生じたりするため、「魔女の宅急便」のような特別な場合以外には申請されることは少ないでしょう。
同じ文言でも登録商標となっているものは、「〇〇〇の宅配便」のような1をクリアしているものです。
問題になるのは主に2と3です。
2についてはネットなどで大炎上、バッシングを受けて申請を取り下げたり、申請却下となる例が数多くあります。
また、3については訴訟になるケースがよくニュースになっていますね。
なお、この商標登録には期限があり、基本的には「10年」となっています。
引き続きその商標を使用したい場合は、10年ごとに商標権を更新する必要があります。
逆に言うと、更新をやめれば失効するので、その商標が必要ない場合は更新しなければよいことになるのです。
4.パチンコメーカーの冠名
では、パチンコメーカーにおける、主な冠名を見てみましょう。
SANKYO フィーバー
平和 ブラボー
三洋 パニック
西陣(ソフィア) ルーキー
ニューギン エキサイト
大一 アイドル
これらは、昭和時代からあるメーカーの著名な「冠名」で商標となっているものです。
昭和からパチンコを打っている人なら冠名を聞いただけでメーカーが分かりますね。
上記の他にも、西陣の「ターボ」、豊丸の「ドン」や京楽の「真っ赤な太陽」「スカーレット」、また今はなき奥村の「ドリーム」「アドバンス」など、古いパチンコファンの人なら聞いたことのあるメーカー機種の商標がありましたが、これらは現在では継続せず失効している模様です。
こうした冠名は、「パチンコ機」という商品に使用されれば立派な「商標」となります。
そのため商標が「機種名」で出願されている場合も多いのです。
例えばSANKYOでは「フィーバークイーン」が商標として登録されています。
その他にも「フィーバーキング」」「フィーバーレクサス」といった過去の「名機」の名称なども申請しており、現在も権利は継続中です。
5.商標権よりも特許権
とはいえ、現在のパチンコ業界で「冠名」が話題になることはほぼありません。
実際、現在でも見られるのはSANKYOの「フィーバー」くらいではないでしょうか。
むしろ、パチンコ業界における知的財産権のメインは商標権以外の「特許権」などにあります。
機種内部の構造や動作などの多くには特許権が設定されており、各メーカーはそれぞれ特許権を保有しています。
中でもシェアトップはSANKYOと言われていますが、現在でもメーカーからは毎年数百件を超える数の特許申請があり、特許競争でもメーカーはしのぎを削っているのです。
パチンコ、パチスロ機はどちらも「特許」の塊です。そのため、メーカー同士で特許を使えるように“特許プール”としてパチンコ、パチスロそれぞれにメーカー団体があり、許諾や使用料などの手続きを簡素化しています。
逆に言うと、こうした団体に加盟しなければ、一つ一つの部品や構造、動きなどに特許料を支払わなければならず、実質、機種を製造することは厳しいものがあります。
余談ですが、釘構成の基本となっている「正村ゲージ」は、考案者の正村竹一氏が特許を敢えて取らなかったため、パチンコ産業が大きく成長したとも言われています。
特許についてはここではとても書ききれませんので、機会を改めてお伝えします。