パチンコ店長の平均年収は626万で5年前より上昇していた
パチンコ市場規模・動向 2023/12/5
当サービスでは定期的にパチンコ正社員の平均年収をまとめているのですが、2023年最新版が完成したのでお届けできればと思います。
なお、各データは2022年に当サービスを利用したパチンコ店の正社員から得たアンケート有効回答1,127件の集計結果です。
前回調査:2017年 店長の平均年収 601万
今回調査:2022年 店長の平均年収 626万
なんと、パチンコ店に勤める店長の平均年収は5年前と比較し約25万円あがっていました。
一方で、パチンコ市場はこの5年間でさらに縮小。
とどまることはなく、2017年12月末時点で10,596店舗(警察庁発表)あったパチンコ店は、2022年12月末時点では7,665店舗となっていました。
企業の雇用や人材の就職といった採用転職市場で考えると『5年間で実に2,931もの店長ポストが消失した』ともいえます。
さて、今回の結果をご覧になられた方は「業界が縮小しているにも関わらず店長の平均年収が増加している点」について、『何故』とか『本当なの』と疑問に思われたのではないでしょうか。
市況感が思わしくなく業績が悪化すれば、生き残るためにコストを削減するというのはよく聞く話です。
例えば、コロナ禍にあっては様々な業態、大企業でも人件費を削減していた記憶がありますが、ホール企業でもそのような取り組みはしばしば耳にすることがありました。
このような背景を踏まえて、個人的には『全体的に平均年収は下がっているだろうな』と思っていたので、集計結果を見て『ほぇ~⁉』と言葉にならない声が漏れてしまいました・・・。
それでは、各データを見て行きましょう。
【表1】2022年パチンコ正社員の職位別平均年収
“表1”で見て取れるのは、パチンコ店に勤務する正社員の職位別平均年収なのですが、前回調査(2017年データ)と比べて『一般職』以外の職位で平均年収がアップしていました。
各職位の前回調査比は以下の通り。
各職位の中で店長の増額が一番大きくなっていました。
平均年収25万円増ということは、1か月あたりで約20,800円の増加。既婚者や世帯主など生計を立てる方であれば、この金額の大きさは肌でひしひしと感じられるのではないでしょうか。
【表2】2022年パチンコ正社員職位別平均年収の店舗数別比較
“表2”は各職位の平均年収を店舗数別で比較したものなのですが、このデータではっきりわかることは『店舗数が大きくなるほど各職位の平均年収が高い』ということです。
10店舗以下(小規模企業)の平均年収と21店舗以上(大規模企業)の平均年収では約90万円もの開きがあります。
職位が上がれば上がるほど、小規模と大規模の年収差は広がっており、同じ“店長”という職位でも「小規模の店長」と「大規模の店長」では平均年収で約155万もの開きで、その差は歴然です。
パチンコ店の平均年収は、小規模<中規模<大規模と、『わかりやすいくらい事業展開規模と比例する傾向にある』といえますが、これは今に始まったことではなく、前回調査においても同じような結果となっていました。
もちろん、個社でみれば小規模であっても『中規模や大規模同等またはそれ以上の平均年収』は存在しますが、その割合は低いと言わざる得ないでしょう。
事業規模の大きさと資金など含めた企業体力はニアリイコールの傾向にあるともいえ、2極化がますます進むと予想される中、小規模と大規模での年収差は今後もしばらくは縮むことがないかもしれません。
【表3】2022年パチンコ店舗あたり平均年収と年収構成の試算
A:パチンコ店舗数および店舗あたり従業員数データ
※特定サービス産業動態統計調査(経産省)および全国遊技場店舗数および機械台数(警察庁)より算出
B:パチンコ店の店舗あたり平均年収と年収構成
※平均人員数は実店舗のヒアリング結果を参考に分配
※年収構成=職位別平均年収×人員構成比
店舗あたりの平均年収と年収構成を試算したところ、2017年の平均年収は528万・年収構成で約420万、2022年の平均年収は539万・年収構成で約428万でした。前回調査と比較して、“店舗あたりの平均年収”が増加していることがわかります。
また、業界に関わるものとして、気になったのは表3Aのデータです。
冒頭に述べましたが、この5年間でパチンコ店舗数は2,931店舗も減少しています。
これに伴い、総従業員数も大幅に減少しているわけですが“店舗あたりの正社員数”も減少している点が時代背景を映しているように感じます。
コロナ禍を経て・・・
・“店舗オペレーションの省力化”がさらに進み適正人員が見直されている
・“働き方に対する意識や価値観が変化”し人材確保の難易度がさらに高まっている
さて、いよいよ本題です。
パチンコ店長の平均年収は何故あがったのか?
ここまでの各データを見て、何となく推測できた方もいらっしゃると思いますが、ざっくり申し上げれば『パチンコ市場の縮小に伴う2極化の加速』による『企業の淘汰』にありそうです。
具体的には表2の解説でもお伝えしましたが、事業規模の大きさと資金など含めた企業体力はニアリイコールの傾向にあるともいえ、店舗数の少ない小規模企業=平均年収が低い企業の淘汰が進んでいることが推測されます。
また、事業撤退や縮小を行う企業の従業員は業界外へ流れ、資金が豊富な大企業や有力企業など“勝つ術”を持つ法人や給与水準の高い従業員は業界内に留まる傾向にあることも考えられるでしょう。
つまり、『ホール企業が給与を引き上げている』ということよりも『給与水準の低い法人や従業員が減ったことが平均値を押し上げた』と考えるのが妥当ではないでしょうか。
【表4】パチンコ店長の平均年収内訳
表4は店長の平均年収内訳ですが、過去の集計結果とは大きく異なっていることが見て取れます。
注目したいのは『500万未満』と『800万以上』の割合が小さくなっている点です。業界環境の変化はこれまでも経験してきたわけですが、やはりコロナ禍という社会現象の影響はとてつもなく大きかったのかもしれません。
これまでの店長の平均年収はある意味ピンキリでデータ分散が大きく“平均値に近い年収”の店長は、そこまで多くない状態であったといえます。
しかしながらコロナ禍を経て小規模法人の淘汰が加速し500万未満が減少、また、業績悪化などから800万以上も減少し、年収分布が小さくなったとも考えられるでしょう。
実際に、大手と位置付けられるようなホール企業においても給与制度を見直し、店長クラスの年収が下がったという例もあります。
まとめ
・2極化によって淘汰が進み平均年収500万未満の割合が小さくなった
・業績悪化などから800万以上の割合が小さくなった
・平均年収である600万~700万未満の割合が大きくなった
店長の平均年収は626万と5年前よりも上がってはいるものの『企業が給与を上げた』というより、淘汰によって『平均値が増えた結果』であるといえそう。
パチンコ業界は確かに縮小傾向で2024年の新紙幣対応も含めて店舗数の減少は当面恐らく下げ止まることはないでしょう。
ただ、生き残るホール企業、勝ち筋を見出すホール企業も確実に存在していくはずで、2023年の現時点で、物価高を受け『基本給を上げる』動きや『給与制度を変えて給与水準を上げていく』と大々的に宣言しているホール企業も既に出てきています。