ロム改造の限界について
パチンコのユルイ雑学 2020/6/2
2020年現在、ロムの違法改造や「セットゴト」の話題やニュースが、あまり聞かれなくなったことにお気づきの方も多いのではないでしょうか。
「裏モノ」の世界では、「ある事情」の一部を除き、プログラム改竄は簡単には出来ない状況なのです。これは攻略誌などの「解析」にも関連することですが、これについて別の機会に譲ります。
そもそも、なぜ「裏」にする必要があるのかというと、多くの場合は「射幸性を上げる」=「稼働を増やす」=「売上を上げる」ためです。
裏になる機種には主に2つの条件があり、一つは「人気機種」、もう一つは「不人気、マイナー機種」です。
前者は「機種数が多いので売上を上げやすい」と考え、後者は元々売れていない機種なので、爆裂機、連チャン機として人気が出るよう改造するというものです。
しかし、改竄・改造には大前提となる「条件」があります。それはプログラムを搭載したロム(CPU)を改竄「出来る」か「出来ない」かという点です。
そもそもロム即ち、ROM(Read Only Memory リードオンリーメモリー)はRead Onlyという名前の通り、書き込み不可・読み出しのみ可能なメモリであり、機械を動かすメインのプログラムが格納されいます。ここを「書き換える」ことが出来なければ、あるいはそのコマンドを制御出来なければ、そもそも裏モノにすることが出来ないのです。
そして、このROMの「セキュリティ」(不正改造防止機能)が、裏ロム製造に大きく影響しています。
もともとパチンコ、パチスロに搭載されていたロムは、長く「Z80」(通称ゼッパチ、内容は8ビットのファミコン程度)が中心でしたが、あまりに機種の違法改造(裏モノ)が横行したため、偽造防止策を講じたロムであるエルイーテック社製の「V1」チップ搭載がスタートしたのが1993年。以降「V2」「V2ライト」「V4」「V4RS」とセキュリティは向上し、2002年にはナック企画のROM「IDナック」も登場。※IDナックは未だに改竄されていません。
そしてパチンコ・パチスロメーカーはV系、IDナックをそれぞれ採用して新機種を開発してきました。それでも2013年あたりまではZ80搭載機種(みなし機など古い機種)やV4搭載機種が市場にあったため、裏業者が生き残ってきたのです。
そのため、ごく一部しかロム改造が出来ない状況にも関わらず、まるでパチンコ全体がまだまだ裏モノや解析ができるイメージが残ってきました。
現実的にはIDナックは改竄できず、V4を改竄できるようになったのは2010年頃。そして2013年頃に登場した最新の「V5」に至ってはいまだに改造の目途がたっていません。
「V5」は警察庁が裏ROM撲滅のために開発を推進したROMです。有名企業が開発参加しておりセキュリティは抜群ですからデーターの改竄や読み出しはできません。
厳密に言えばお金と時間をかければ出来るかもしれませんが、いずれもかかり過ぎて道楽でもなければ偽造ROM開発は費用対効果がまったく合わず現実的ではないのです。
2020年現在、市場のほとんどの機種はV5かIDナックを採用していますから、裏モノはできない状況です。「V5の内部仕様が判明した」「裏ロムが開発できた」という噂はその筋では何度も流れていますが、いずれもガセ情報ばかりで、V5攻略は実現していなのです。
当然、裏モノの話とよく混同される「遠隔操作」も実装は困難といえるでしょう。
遠隔操作に対するイメージとして「店長が大当りを事務所などで自由に操作できる」といったものをよく耳にしましたが、そもそも遠隔操作は“お客さんを増やすため”という目的で一台一台大当りの出し入れするような使い方はしません。むしろ島単位での出玉制御こそが本筋であり、個人の狙い撃ちなどはあまり意味がない。
まして、メインロムをいじれない現在では実装は極めて困難。仮に莫大な財力でV5やIDナックの解析に成功しても、費用回収するには相当な時間と労力がかかるはずです。あくまで現在のV5などが前提ですが、高セキュリティのロムを攻略する「遠隔操作」は、“非現実的”といえるでしょう。
仮に裏があったとしても、それはV4以前の古い機種の黒い名残りなだけ。いずれは消え去る運命です。もう「この機械、裏なのでは??」「店が遠隔やってる!?」という懐疑的な気持ちとはサヨナラしたほうが良いでしょう。