パチンコホールの就業人口
パチンコ市場規模・動向 2020/8/20
新型コロナによる緊急事態宣言解除以降、事業再開後も軌道に乗らない業界は多く、特に小売業、飲食業、旅行業は大きな影響をうけています。
帝国データバンクや東京商工リサーチによると、ホテルや旅館などの倒産件数は41社となり負債総額も828億円にのぼっています(6月30日時点)。
旅行業に関連してANAホールディングスでは2021年度の新規採用の中止や、エールフランスでの7,500人余りの人員削減など有名企業のニュースをご存知の方も多いでしょう。
この他の業界でも、採用活動を一時休止または大幅縮小しているところが大半で、就業人口にも影響が出てきそうです。
パチンコホール業界はどうなのか?というと、個人的に観測しているデータでは2020年7月時点では昨年をやや上回るスピードで店舗数が減少しています。
パチンコ市場は、そもそもの課題点(遊技機規制、広告規制、他時間消費型サービスなど)の影響が大きく、全体感として長期にわたり下落し続けており、大手・中小の2極化・淘汰が激しくなっています。
2000年時点のパチンコ店舗数は約17,000店舗でパチンコ就業人口は約36万人。2019年時点でのパチンコ店舗数は約9,600店舗でパチンコ就業人口は約21万人となっており、ほぼ同等の下落率でした。
新型コロナによって今後さらに2極化が進み、パチンコ店の減少が加速した場合、パチンコ就業人口も同様に下落していくことが推測されます。
表①【パチンコ店舗数の推移とパチンコ就業人口の推計
※特定サービス産業動態統計調査(経産省)および全国遊技場店舗数及び機械台数(警察庁)より算出
ちなみに2000年~2019年の有効求人倍率をみると1.0倍を上回った年は2006年と2007年、2014年以降からは1.0倍以上が続き、特に2017年からは1.50倍を3年連続で上回っています。
採用市場が超売手市場に移行したことで応募者を集めるのが難しくなり、人手不足、人材不足が営業や経営に影響するケースも増えました。
【表②パチンコ店舗あたり台数の推移とパチンコ店舗あたり従業員数の推計】
※特定サービス産業動態統計調査(経産省)および全国遊技場店舗数及び機械台数(警察庁)より算出
店舗あたりの従業員数を見ると、正社員数は2000年時点で12.3人、2019年時点では9.7人です。なだらかな増減幅で、ここ数年はほぼ横ばいで推移。一方で、非正規社員数の増減幅はかなり大きかったですが、正社員同様ここ数年はほぼ横ばいとなっています。
注目する点として、パチンコ店舗数が減少していく一方で、店舗あたりの台数は増加し続けており、それに伴い、従業員ひとりあたりの台数も増加傾向にあるということです。
要はひとりあたりの管理台数、対応台数が増えています。サービスオペレーションを滞りなく運営するために、特に非正規社員を増員してもおかしくないのですが、2012年に下げ止まって以降、大きな変動がありません。
2009年から2012年にかけてパチンコ就業人口は大幅に下落しており、特に非正規社員が顕著で、これはリーマンショックと東日本大震災の影響が考えられます。
当時の有効求人倍率は2009年で0.45倍(過去最低)、そこから徐々に上昇するも2012年時点で0.82倍と採用市場は買手優位の状態にありました。
しかし、この間には広告規制など業界を取り巻く環境も大きく変化し、予算やコストの見直し、人員整理が進んだものと思われます。また、各台計数機の普及により業務量が軽減され、必要人数を抑えられたことも要因として考えられそうです。
2020年現在、新型コロナウイルス感染予防のため、パチンコ店の業務量、対応工数は増えつつありますが「コロナ前の従業員数」で対応すれば当然ひとりあたりの負荷は大きくなり、労務環境や離職率に影響が出る可能性は否めません。
「コロナがいつ明けるか」がわからない今、「明けない、無くならない」ことを想定した店舗運営とオペレーションを構築、適正人員を改めて模索していくことが求められています。
採用市場が買手優位に移行している現在、コロナ前よりも応募者が集まりやすい環境ですから、自社・自店にとっての優秀な人材を獲得するチャンスに変えていきましょう。