自店で取り扱う製品の実態/トイレマット編
転職雑記 2021/6/24
コロナ禍の陰で報道が少なかったですが、2020年末、珪藻土バスマットなどにアスベスト(石綿)が混入していた問題が起こったことをご存知でしょうか。
混入が発覚したのは、家具最大手ニトリホールディングスやホームセンター最大手カインズの製品。
いずれも中国で製造されていたことが明らかになり、その原因については現在も調査中です。
この他にもヤマダホールディングスやイズミなどの店舗で取り扱っていた珪藻土バスマットに関してもアスベストが混入していることが分かり、自主回収されています。
この珪藻土バスマットは通常の使い方で使用している限りはアスベストが飛散する恐れは無く、重大な健康被害は発生していないため製品回収で収束しつつあります。
1.アスベストの健康被害
知られているように、アスベストは耐火性、断熱性、電気絶縁性が高くかつ安価であるため、「奇跡の鉱物」と呼ばれ断熱、保温、防音の建築資材として戦後の高度成長期に重用されたほか、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な用途に広く使用されてきました。
しかし、アスベストは非常に軽いため、建物の解体現場で破壊された建築資材から空中に大量に飛散し、このアスベストを長期間吸い込むと肺ガン、悪性中皮腫などの重い健康被害をもたらすことが判明しました。
発症まで長期間を要するため「静かな時限爆弾」とも呼ばれ、1970年代より暫時規制を受けるようになりました。
2006年9月には労働安全衛生法の改正により、アスベストの含有量が重量の0.1%を超える製品の製造・輸入が禁止され、以来、日本国内ではアスベスト含有成型板は製造されなくなっています。
2.パチンコ店ではトイレマットなどで利用
パチンコ店でもトイレマットには近年、珪藻土マットが人気となっています。
過去、パチンコ店で主に利用されていたトイレマットはあくまでも床を汚さないための役割でした。
マットに付いた尿は吸収されず悪臭がするなど手入れが大変・・・。
しかし、新登場した珪藻土マットは珪藻土と良質食物繊維など自然界にある素材を原料に製造されており、消臭・除菌を可能にした新しい概念を持つトイレマットとして店内衛生に大きく貢献しました。
また、珪藻土製品はマットだけにとどまらず、飲み物に添えられる「コースター」もその吸湿性の高さから珪藻土製品が増えていますが、珪藻土自体は生物起源で、鉱物起源のアスベストが含まれる余地もありません。
このことから製造段階で不純物としてアスベストが混入したものと見られており海外製は注意が必要です。
※冒頭述べた通り、日本国内でアスベスト含有成型板は製造されなくなっている。
3.アスベストを禁止していない国も
全国労働安全衛生センター連絡会議の資料によると、アスベストを禁止している国は日本を含むイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど67カ国(2020年12月29日時点)。
反対に禁止していない国はロシア、中国、アメリカ、タイ、インド、北朝鮮など。ちなみに消費上位は中国の24.9%、インドの15.8%、ロシアの14.8%であり、生産はかつてカナダが世界1位でしたが現在はロシアが1位となっています。
カナダは輸出・生産など2000年代までアスベスト産業の最大国(主にケベック州)でしたが、2012年に最後の鉱山が閉鎖され、2018年には国内での微量でも含む生活用品の製造・輸入・販売および使用を禁止されるなど従来の対応から大きく舵を切りました。
このように、海外のアスベスト使用が禁止されていない国で生産された製品であれば、混入するリスクが常に存在しているといえます。
年末の騒動もアスベスト消費1位である中国の製品であったことは、「驚くに値しない事」なのかもしれません。
最近はベトナムなどに生産拠点を移動する企業も増えていますが、アスベストの消費に関しては中国を筆頭にタイ、インドネシア、ベトナムなどアジア市場だけで3割以上を占め、これにインドとスリランカを加えるとほぼ半数がアジアとなり、アスベスト産業にとってはアジアが最後の聖地となっている事実は見逃せません。
自店で扱う製品、特に海外製品についてはこうしたリスクを孕んでいることを忘れてはならないでしょう。