早期退職優遇制度について
転職雑記 2024/2/6
企業が経営強化や回復を図る方法の一つに「早期退職優遇制度」があります。
早期退職と聞くと「定年前に辞めさせる制度」「リストラの一種」というようなネガティブなイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし、この制度は「リストラ」や「解雇」とは違い、早期退職をする社員には様々なメリットがあります。
今回は、「早期退職優遇制度」について確認したいと思います。
1.早期退職優遇制度の基本
「早期退職優遇制度」とは、優遇措置を設けて自主的な退職を促す制度のことをいいます。
人件費削減に向けて行われる「希望退職」とは異なり、福利厚生の一環として恒常的に運用されることが一般的です。
基本的な早期退職優遇制度では、「退職金の割増し」や「有給休暇の買い上げ」「再就職支援サービス」などの優遇措置が設けられています。
2.早期退職優遇制度の目的
「早期退職優遇制度」には、主に3つの目的があります。
①人件費の抑制
会社が年功序列制を採用している場合、中高年の社員にかかる人件費は高額になります。
少子高齢化が進む現代においては、若手社員が減少する中で年功序列を維持しようとすると人件費が経営を圧迫することは明らかです。
そのため、主に中高年層へ早めの退職を呼びかけ、人件費の削減を図る場合が多くなっています。
②組織の若返り
早期退職優遇制度は、中堅以上の人員を減らすことで若手社員に重要ポストを配分する目的があります。
こにれにより組織の若返りと若手社員のモチベーションの向上を図るのです。
③キャリアサポート
早期退職優遇制度には、定年前に会社を離れ、キャリアアップや別の道を進みたいと考える社員を支援する目的もあります。
早期退職優遇制度の多くでは退職金上乗せの優遇措置が設けられているため、社員の多様なライフプランを尊重し後押しする制度でもあるのです。
3.主な「優遇措置」
早期退職優遇制度では、退職予定者に対して優遇措置を設けることが一般的です。
代表的な4つの優遇措置について見て行きましょう。
①退職金の割増し
早期退職優遇制度では、通常の退職金に一定額を上乗せした「割増し退職金」を支払うことが代表的な優遇措置です。
上乗せ金額は企業の状況や原資によっても異なりますが「全員に一律支給」「年齢・勤続年数に応じて一定額を支給」「給与の一定月数分を加算」などがあります。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査の概況」によれば、『勤続20年以上かつ45歳以上の退職者』の早期優遇の退職給付額は、大卒・大学院卒(管理・事務・技術職)で平均2,266万円、高校卒(同)で平均2,432万円、高校卒(現業職)で2,146万円となっています。
②有給休暇の買い上げ
早期退職者のなかには、有給休暇を使いきれなかった社員もいるかもしれません。
その際は、企業が日数に応じて単価を決めて買い上げることもあります。
③特別休暇
早期退職の決まった社員は、退職日までに再就職先を探したり、関係各所にあいさつ回りをしたりしなければなりません。
通常勤務をしながらでは難しい場合もあるので、会社が早期退職者の勤務を免除するケースもあります。
④再就職支援
早期退職優遇制度の対象となるのは、40代以降の中堅層以上がほとんどです。
この層は一般的に再就職が難航することも珍しくありません。
そのため会社は「再就職支援サービス」を導入し、早期退職者の新たな出発を支えるケースも増えています。
4.希望退職制度との違い
早期退職優遇制度は「希望退職制度」とは異なります。
希望退職制度が主に経営悪化に伴う会社都合の人員整理になりますが、早期退職優遇制度には強制が無く、社員の意思が優先されます。
また、目標人数や期限を定めて臨時的に行われるもので、会社の業績が良い時にも実施される場合があります。
ただし、人員整理であることには変わりないため、整理解雇である「リストラ」の前段階として行う企業も増えています。
早期退職優遇制度の利用には会社の業績や社内情勢を見極める必要もあると言えます。
「早期退職制度」は労働者に自主的な退職を促す制度であり、法的拘束力はありません。
そのため会社から退職を強要することはできず、退職に応じるかとうかは労働者の自由となりますので「解雇」や「リストラ」とは異なります。
早期退職制度を利用する際には、自身のキャリアプランを考慮した上で会社が提示した条件をよく検討してから判断することが大切です。