名ばかり管理職に注意
転職雑記 2024/2/27
皆さんは「名ばかり管理職」という言葉を聞いたことはありませんか?
企業において管理職とされながら、労働基準法にある「管理監督者は割増賃金の適用外」とされて残業代などの割増賃金が支払われない従業員のことを言います。
平成の中頃に問題提起され社会問題となった事案です。
1.「名ばかり管理職」とは
「名ばかり管理職」とは、ズバリ“名目上だけの管理職”のことです。
管理職になれば、通常は役職に相応した権限や報酬が与えられますが、「名ばかり管理職」では企業が労働基準法にある「管理監督者は割増賃金の適用外」を逆手に取り、「仕事の権限がない」のはもちろん、「管理職だから残業代を支給されない」として役職手当や残業代が支払われないのです。
労働基準法における「労働時間等に関する規定の適用除外」を確認してみましょう。
【労働時間等に関する規定の適用除外】
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
(引用元:労働基準法41条)
「名ばかり管理職」問題では、企業は二の『事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者』を不正に適用し、残業代や休日出勤手当が支払われない代わりに、役職手当等が支払われているはずの管理職に対し、役職手当がない上に無給での残業、休日出勤のほか、遅刻や早退での減給などを行い、人件費削減が横行していたのです。
2.ファーストフード店長が訴える
「名ばかり管理職」の横行に対し、某有名ファストフード店の店長が訴えを起こして注目を集めました。
これがきっかけとなり、平成21年4月 に厚生労働省から「管理監督者の範囲の適正化について」と題する労働基準局監督課長発通達(基監発第0401001号)が出され、都道府県労働局長に対し管理監督者の範囲の適正化について監督指導を行うよう要請したため、多くの企業で「名ばかり管理職」問題の是正が図られるようになりました。
3.「管理職」の基本
そもそも、どのような労働者が労働基準法における「管理監督者」に当たるのでしょうか。
(1)出社、退社、勤務時間の制限を受けていない
管理監督者は、業務の内容が労働時間で規制されない必要があります。
そのため「何時から何時まで必ず在社する必要がある」というように勤務時間が拘束されているような場合には、本人の裁量の余地がないとして管理監督者とは認められません。
また、遅刻や早退で給料や賞与が減らされるような場合も管理監督者であると言い難いのです。
(2)経営者と一体的な立場で仕事をしている
「責任と権限があること」とは、経営者と一体的な立場である必要があります。
「肩書だけ」では不十分で、あくまで「実態としてふさわしい責任や権限が与えられている」必要があります。
(3)管理監督者に見合った報酬、待遇がなされている
賃金等の報酬について、基本給や役職手当がその地位にふさわしい待遇が為されている必要があります。
残業代以上の役職手当が支給されていたり、定期給与、ボーナスなどで一般社員より優遇されたりしているなどの措置が取られている必要があります。
4.こんな状況なら「名ばかり管理職」!?
上記の要件に当てはまらない場合、あなたは管理職ではない可能性が高いと言えるでしょう。
①自身の裁量で労働時間がコントロールできない
②管理職なのに部門・部署の統括できず、企業の経営にも関与できない
③報酬で十分な待遇がされているとは言い難い
会社によって組織や職制は様々なため、管理監督者に当てはまるかどうかについては、労働基準法や労働安全衛生法の内容をふまえケースごとに判断する必要がありますが、今後も企業は、労働管理を正しく運用することが厳しく求められていることを忘れてはなりません。